トップページ > 経営倫理情報 > AROUND経営倫理 > 名言再訪(第6回)
カリフォルニア州シリコンバレー。サンフランシスコ空港から車で一時間も走ると、その中心にあるスタンフォード大学に着く。全米の大学でも屈指の広大なキャンパスは巨大な木々に囲まれさながら植物園のようである。
その卒業式に招かれたアップルの創業者スティーブ・ジョブズが講演の最後を締めくくったのが上記の言葉である。すでにがんを宣告されていたジョブズが亡くなる6年前の2005年のことである。
「hungry」とは決して自己満足せず絶えず一段上を目指す精神の渇望状態のことであり、「foolish」とは何事かを成すに当たって必要以上に考えすぎて臆病にならないということである。
起業家精神の真髄を表しているが、もとはジョブズの言葉ではない。19歳の時に愛読していたカタログ誌の「ホールアース(全地球)」の休刊となる前の最終号の裏表紙に書かれていたカリスマ的編集者スチュアート・ブランドの言葉である。
これに深く感銘したジョブズは後に自らこれを体現することになる。飾り物の座右の銘などではない。西海岸をサンダル履きでほっつき歩き、マリファナを吸っていたスティーブ少年の心に強く響いたのだ。
ジョブズのもうひとつの名言を上げるとすると「Think different」だろう。人と違ったことを考えよ、というわけである。ただ貪欲で愚直なだけでは成功は覚束ない。人と違うことをやる発想の斬新さが必要である。
因みに日本の中学生が英作文でこう書いたら丸印はもらえないので要注意。まねをしてはいけない。なぜなら伝統的な英文法に則れば、動詞のthinkを修飾するならdifferentlyと副詞にしなければならないからだ。
米国でもこの点が議論となったが、ジョブズは「違った風に考える」のではなく「違ったことを考えるのだ」と自説を押し通し、広告のコピーもこのままにした。
起業家が英文法まで変えてしまう。まさにジョブズの面目躍如である。
『経営倫理フォーラム』第23号掲載