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「真面目ナル技術者ノ技能ヲ最高度ニ発揮セシムベキ自由豁達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」(井深大)

名言再訪(11)独創技術生む必要条件を明示

ソニーの前身、東京通信工業の創立式が昭和21年5月7日、東京日本橋の百貨店白木屋の3階の一室で行われた。早大在学中に発明した「走るネオン」がパリ万博で優秀発明賞を受賞した創業者の井深大や海軍技術中尉で終戦を迎えた盛田昭夫ら20数名が参加した。

その席上、井深は自ら執筆した8項目から成る設立趣意書の内容を説明したが、真っ先に挙げられていたのが上記の言葉。要にして簡。日本経営史に残る名言といっていい。「自由豁達ニシテ愉快」であって初めて才能は花開くのである。

井深はこれに次いで、技術面、生産面から「日本再建と文化向上」に貢献することを会社設立の目的にあげている。戦後各地で無数に誕生した中小企業の一つとしては驚くべき気宇壮大さである。

旗揚げした東通工の社員はよく働いた。お金も設備もないが、自分たちには頭脳があると信じていた。ソニー創立40周年記念誌「源流」におもしろいエピソードが載っている。間借りしていた白木屋は閉店すると当然ながら戸締りする。深夜まで働いている東通工の社員は仕方がないから非常口から出るしかない。

そのうち泥棒と間違えられて警官に逮捕される者が出るようになった。そこでどうしたか。技術には自信のある者ばかり。何とすべてのドアの合鍵を作ってしまったのである。

設立趣意書には会社設立の目的に次いで具体的な経営方針が書かれているが、これまた「良い会社とは何か」を考えるうえで示唆に富む。「経営規模トシテハ寧ロ小ナルヲ望ミ大経営ナルガ為ニ進ミ得ザル分野ニ技術ノ進路ト経営活動ヲ期スル」「従業員ハ厳選サレタル可成小員数ヲ以ッテ構成シ形式的職階性ヲ避ケ一切ノ秩序ヲ実力本位、人格主義ノ上ニ置キ個人ノ技能ヲ最大限度ニ発揮セシム」。

それから69年。今、ソニーが大企業病の克服に苦しんでいるのを見たら井深は何というだろうか。同社は2016年3月期の連結最終利益が1400億円の黒字になる見通しだと発表した。黒字となれば3年ぶりだが、過去7年間に15回も業績を下方修正した同社だけに前途は不透明。もしソニーが本格的に回復すれば、その時の経営者は大企業病の克服策について、名言を残すことができるはずだが、果たしてどうなるか。

(小山博之)

『経営倫理フォーラム』第28号掲載


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