トップページ > 経営倫理情報 > ニュースダイナミクス > 2016年1月25日配信記事
一般財団法人・化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)が国の承認と異なる方法で血液製剤などを長期間にわたって製造していた問題で、厚生労働省は1月8日、医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき化血研に対して110日の業務停止命令を出した。停止期間は同月18日から5月6日までで、製薬会社に対する行政処分としては過去最長になる。
化血研の第三者委員会(委員長=吉戒修一・元東京高裁長官)が昨年12月2日公表した調査報告書によると、化血研は1974年以降、血液製剤の製造に際してヘパリン(血液が固まるのを防ぐ物質)を添加するなど、31の工程で国の承認と異なる方法を採用。早期の製品化などを優先したため、製造工程変更の申請をせず、承認も受けていなかった。
国の検査強化に備えて、幹部の指示や承認の下で95年から実際の製造記録とは別に、承認通りの方法で製造したとする虚偽の記録を作成。古い書類の提出を求められた際には、作成時期をごまかすために紫外線を浴びせて紙を変色させるなどの工作も行った。また、添加物などの在庫量の帳尻を合わせる目的で、虚偽の出納記録も作っていた。
こういった不正行為が長期間続けられたことについて、第三者委員会は「組織の閉鎖性、独善性が最大の原因で、患者を軽視し、企業利益を優先させる姿勢がうかがわれる」「常軌を逸した隠蔽体質が根付いており、研究者のおごりも根幹にある」と指摘。厚労省も「国の検査を欺くことが慣例化し、違法行為の意識すらなく組織的に行っていた」として、厳しい業務停止命令を出した。
過去に何回も繰り返された薬害事件を挙げるまでもなく、人の命を預かる薬剤メーカーには、他の会社にも増して厳しいコンプライアンス(法令順守)が求められる。化血研に対する第三者委員会の調査報告書の指摘や、厚労省の処分は、まだ甘いと言ってもいいくらいだ。歴代幹部の隠蔽工作関与に関しては、今後刑事責任追及の動きに発展するかも注目される。
化血研は、旧熊本医科大学(現・熊本大医学部)の研究所を母体として45年に設立。献血を原料とする血液製剤を製造する国内3法人(化血研、一般社団法人・日本血液製剤機構、日本製薬)の一角を占め、ワクチン製造の国内シェア(A型肝炎10割、B型肝炎8割、インフルエンザ3割など)も高い。15年3月期の売上高は約475億円。従業員数は約1900人。
80〜90年代の「薬害エイズ訴訟」では、化血研は他のメーカーなどとともに被告となり、責任を認めて和解し、謝罪した。にもかかわらず、これと同時期に国の承認と異なる方法で血液製剤などを製造していた。日本赤十字社を通じて原料を提供している献血者の善意を踏みにじる行為であり、厳しく糾弾されても仕方あるまい。
塩崎恭久厚労相は1月8日の記者会見で「(今の)化血研という組織のままで製造販売することはない。結論を110日間(業務停止期間)で出していただく」と述べ、血液製剤の事業譲渡や他社との経営統合も含めた組織体制の見直しを強く求めた。コンプライアンス無視の代償は、あまりにも大きい。化血研はこれを重く受け止め、薬剤メーカーの原点に立ち返って、経営倫理を実践できる組織に生まれ変わらねばなるまい。
一方、厚労省も、献血に支えられた、日赤を中心とする現在の血液製剤の供給体制の問題点を洗い出す必要があろう。薬害エイズ事件を教訓に推し進めてきた「国産化路線」が、安価な輸入製剤や外国製の遺伝子組み換え製剤の普及で岐路に立たされているからだ。化血研の不正行為を一法人の問題に終わらせず、国内の血液製剤事業の再構築につなげて、安全な製剤の安定供給という重要課題に取り組まねばならない。
2016年01月25日配信