トップページ > 経営倫理情報 > AROUND経営倫理 > 名言再訪(第1回)
日本資本主義の父とも言われた明治の実業家渋沢栄一が引退後の大正14年に著した「論語講義」の一節を自ら要約し、講演などでしきりに使っていた言葉。
苗字帯刀を許された豪農出身の渋沢は幼時から漢学者に支持して四書五経を修めた。
第一国立銀行の創設など現役時代に500社以上の設立に関与し株式会社制度の普及に力を入れた渋沢がその経験を踏まえて論語を解説したのが「論語講義」である。
それだけに学者の解説とは一味もふた味も違う。富も地位も大きな仕事を成すにはぜひ必要だという。孔子が粗衣粗食を説いているというのはまったくの誤解。問題は富や地位を「正当の道」によって得るかどうかだとする。
前記引用句のもととなった論語の渋沢による解説部分は次のようになっている。
「不義や不理やごまかしで富貴を得ようとしても、とうてい得られるものではない。もし何かの僥倖で富貴を得たことがあったとしても、それはあたかも天上の浮雲のごときもので、たちまち一陣の風に吹き散らされてしまうものである」
徳川慶喜に取り立てられて幕臣となりパリ万博の代表使節に加わったり、大蔵省に出仕したりした多彩な経験から到達したのが「国家の基本は商工業にある」との信念。
商工業を営む企業が発展するには算盤だけでなく、論語つまり倫理が必要というわけである。
渋沢の「論語講義」は、わが経営倫理フォーラムの不祥事企業リストに登場する企業の経営者には一陣の風に吹き飛ばされる前にぜひ読んでほしい一冊である。
『経営倫理フォーラム』第18号掲載