六本木・国立新美術館で、「ルノワール展」が開催されている。
世界有数のルノワール・コレクションを誇る、フランスのオルセー美術館とオランジュリー美術館からさまざまな代表作を交え、合計100点を超える作品と資料でピエール・オーギュスト・ルノワール(1841〜1919)の全貌を紹介している。初期作品の《陽光の中の裸婦(エチュード、トルソ、光の効果)》や日本初公開の《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》の他、《ぶらんこ》などの代表作が展示され圧倒される。
《田舎のダンス》と《都会のダンス》は、45年ぶりにそろって来日した。深刻さを嫌い、親友の詩人マラルメの葬儀でも、悲しみに耐えようと突然笑い出したというエピソードも残っているが、ルノワールは、「絵画は、美しくてきれいなものでなければならない」と語っている。「晩年の作品になるにつれ、作品の劣化を考慮し、色彩がより明るく多色使いで描かれるようになったことに現れている」と、同展監修のバーンズ財団(米国フィラデルフィア)副館長のシルヴィ・パトリ女史は話している。
ルノワールは、数多くのモデルを使ったが、それは、親しみが重要な要素で、そのモデルを理解した上で描いた。人物を描くことの多かったルノワールの優れた洞察力は、モデルへの強い親近感が背景にあると言われる。オルセー美術館の至宝、上述の《ムーラン…》では、非常に多くの友人、知人が協力し、見事な大作となった。
達者な画筆で順調に制作活動が続いたルノワールでも、1880年以降、40歳代に「アングル風 の危機の時代」と呼ばれる壁にぶつかった。その混迷は深刻で、およそ10年にも及び、その後「真珠色の時代」と呼ばれる独自の描法と自然観を獲得したとされる。それは、今回の《ピアノを弾く少女たち》にもみられる。
リューマチで関節も節くれだち、絵筆が握れなくなってからは、手首に絵筆をくくり付けて描いたという努力家だ。晩年の大作《浴女たち》は、地中海沿岸の理想郷をテーマとし、得意としたバラ色の絵画。
ルノワールの思いが潮のように伝わってくる。作品の力を感じることのできる展示のラストとなっている。
会期:2016年8月22日まで 休館日:毎週火曜日(8月16日は開館)
入館料:1,600円(学生割引有り)
2016年07月01日 配信