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<第2回>
 農業での相談概要や事例

(1)病気、賃金などの相談が寄せられる
 農業経営体は、日本人従業員を雇用する場合、農業に対する熱意と人柄を重視し、試用やパート・アルバイトとして様子を見、採用後は責任感や熱意・意欲、専門的知識・技能、決断力・実行力に期待する。(農業団体調査結果)

 一方、外国人技能実習生の雇用は、外国の送出し機関と連携して選抜・面接して決定し、日本語会話など3〜4ヶ月間の事前講習を実施する。そして入国前に雇用契約を締結して来日する。

 農家・農業法人には、賃金のほか帰国旅費など、1人当たり年間200万円程度の費用負担となる。

 制度では相応のルールと負担が求められるが、農家は経営者としてコスト削減の効率性も求める。一方、技能実習生は、1円でも多い賃金獲得にどん欲である。ここに時間外労働などで、余地が出でくる。

 技能実習生からは、病気・けが、生活習慣・文化、手当・賃金などの相談が寄せられ、一方受入れ機関は、より高い質や労働力確保を技能実習生に求めている。

(2)問題防止のコミュニケーションを
 数多くの先進事例の中でも、香川県観音寺市で農業法人を経営するOさんは、毎年インドネシア人技能実習生を雇用し、賃金システムや人事において日本人従業員と差別しない。同人の経営理念や教育方針は明確であり、現に3年目の技能実習生を現場リーダーに登用し、将来は帰国実習生達との海外出資も検討している。

 先進事例に共通するのは、人権を尊重してお互いの立場を理解しあい、指導・相談・問題防止のコミュニケーション確保に双方が努力している。

 また多くの事例で、雇用多元化の一つとして外国人技能実習生を受入れており、制度の適正実施とともに労働力確保という点でも真正面から捉えている。そして全国の約3000余の農業受入れ機関は、有効な活用に多くの道があることを実際の受入れ事例で証明している。

 一方農業分野の相談は、制度のしくみや活用、労働時間管理・賃金支払などの労務管理、技能実習生の処遇や健康等、実習実施計画や技能評価試験、職種・作業の追加、再技能実習の可否、社会保険と労働保険への加入義務、不正行為、制度のメリット・デメリット、組合の設立要件、送出し機関・選抜、講習関係、受入れ経費、申請手続、など多方面に渡っている。

(3)労働時間、賃金不払い問題なども…
 しかしながら、全産業分野で法令違反もある。入管法と省令で19項目の不正行為を類型化しているが、不正は相変わらず発生している。その中でも賃金等の不払いなどの人権侵害が、ついに23年度でトップになった。

 また労働基準監督署は適正化を指導する一方で、労働関連法違反による臨検では安全衛生違反、労働時間や賃金不払いなどが大半を占める。さらに外国人技能実習生からの申告数も増えている。

 いずれの違反や不正行為も関係法令の知識不足に加え、「これくらいなら、ばれないだろう」の隠ぺい体質が背景にある。しっかりした知識の習得と、ルールにのっとって当たり前に実行していれば問題は発生しない。

 違反の発生は、技能の修得・習熟や人材育成という根幹を理解しない(あるいは理解しようとしない)で、コスト抑制ばかりを優先させ、人権を無視した安価な労働力として利用することにある。また技能実習生や送り出す外国側にも、受入れ顧客や労働者性を優先する制度と実態の乖離も認められる。

 つまり経営倫理にいうジレンマ克服や、適切なバランスが成立していない証拠と捉える。(つづく)

2013年02月23日配信


記事一 配信
<連載第1弾>
外国人農業技能実習に見る経営倫理
(執筆者:全国農業会議所 相談員 経営倫理士・八山政治さん)
第3回 労働力と人づくりと国際貢献
2013年03月11日
第2回 農業での相談概要や事例
2013年02月23日
第1回 外国人農業技能実習の実態
2013年02月04日

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