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トップページ > 経営倫理フォーラム > マイ・ノート 経営倫理 > 2018年10月24日配信記事

(13)「忖度」と企業活動について

執筆: ACBEE総合企画委員 岸野 敏幸

昨年来、政官界において問題となっている事象として、「忖度(そんたく)」があります。これは権力者に対して「忖度」した行動をとった人たちが、特定の者に対し有利な取り計らいをしたことにより、政治・行政の中立性・公平性をゆがめたのではないか? という問題で、もし本当であれば極めて由々しき問題です。

■そもそも「忖度」とは悪いもの?
 そもそも「忖度」とは、人の心を推し量る(「寸」も「度」もはかる)という意味で、善・悪に関係なく使用される言葉です。古くは中国古代の詩集『詩経』にその用例があり、その中に暗君側の奸臣(かんしん)の心を「忖度」して不正を摘発する諫(かん)臣(しん)が出てきます。このように「忖度」とは、悪い意味ではなく、むしろ善い意味で使用されていたとも言えます。
 それでは、なぜ「忖度」がなされるのでしょうか。どの組織であっても組織を動かすには上司から部下への命令・指示が必要になります。当然、上司はいちいち1から100まですべての事を指示することはできませんので、どうしても部下が上司の意向を「忖度」する必要が出てきます。大きな組織ほどこの傾向は強く、ある意味「忖度」なくして業務はまわりません。「忖度」自体が悪いのではなく、「忖度」は適切になされる限り、組織の意思決定やコミュニケーションは円滑に行われます。

■企業にも「忖度」がある −上からの経営倫理の浸透が大切−
 企業も組織で動く以上、同様のことが言えます。通常、部下は上司の意向を「忖度」して行動します。上司(忖度される側)と部下(忖度する側)の認識が一致している場合は良いのですが、認識にギャップがある場合は問題となります。特に、上位下達の組織の中では部下は上司の意向を(良かれと思い)過度に忖度する傾向があり、この場合は業務の適切性をゆがめる可能性があります。
 「忖度」は表に示されないことから、その責任の所在はとても分かりにくいものです。私は、不適切な「忖度」がなされるときは、ほとんどが忖度される方の上司側に原因があるのではないかと思います。上司は、部下に対し(自己の思い通りに忖度されることを期待して)言わずもがなの態度を示したり、暗にサインを出したりするものです。本当にまずいことは、真正面から命令や指示は出せないものです。
 このように「忖度」の問題は、上下関係のある組織社会のなかで起こることから、まずは上位者から襟を正し、上位者からの経営倫理の浸透が必要だとつくづく考えさせられます。



2018年10月24日配信


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