本文へスキップ

企業・組織の経営倫理を推進する人材を育成・支援するNPO法人

トップページ > 経営倫理フォーラム > マイ・ノート 経営倫理 > 2018年06月08日配信記事

(4)頻発する品質・性能データ改ざん
   見えてくる大企業特有の姿

執筆: 日本経営倫理士協会 常務理事 北村 和敏

昨年から頻発する不正、日本を代表する素材メーカー(神戸製鋼、東レ、三菱マテリアル)によるデータ改ざん問題は、“ものづくり日本”の信用・信頼を揺るがしている。米国カリフォルニア州では神戸製鋼・トヨタ自動車に補償を求める集団訴訟へと発展している。さらに神戸製鋼は社長、副社長の引責辞任が報じられた。

■自分勝手な解釈で透明性を欠く
 そもそも部品メーカー(クライアント)と交わした仕様レベルの契約をクリアできない時は、“特採”(特別採用)をクライアントに認めてもらえばいいわけだが、社内手続きが面倒なことを理由に、自分勝手な解釈でクライアントへの透明性を欠いたデータ改ざん(社内特採)という安易な方向へ走ってしまっては非難されても仕方がない。
 研究者は素材の品質に問題ないのだから、仕様をクリアしたようにデータを改ざんすることへの罪の意識が低下していた面もあるようだ。研究者は当然、できればクライアントが要求する仕様をクリアしたいのが本音であろう。しかし現状では技術レベルが追い付かない、これでは納期が間に合わなくなり、クライアントに迷惑が掛かる、営業部門からやいのやいの苦情がでることも避けたい、という意識が働いたのだろう。
 納期に追われた過度のプレッシャーや強迫観念(他に迷惑は掛けられない)が、本来持つべき責任感をマイナスの方向へと作用させている。良いことも悪いことも伝えなければならないというプラスの責任感が欠落し、ねつ造・隠蔽(いんぺい)へとつながったのだ。
 中堅外資の素材メーカーの品質保証リーダーをしている私の大学時代の友人に、今回のデータねつ造について聞いてみた。『品質がコストや納期に優先すること』や『契約に定められた仕様の遵守』は社内ではその通りなのだが、企業規模が大きくなればなるほど、その通りが難しいのではと言うのである。

■部門評価が優先し社内合意取れず?
 中堅素材メーカーだと契約規格をクリアできない時は、R&D・品質管理・製造・検査・営業が集まり、契約をクリアするまでの時間や能力を率直に話し合って、営業にも納得してもらう。しかし、大企業にはこれが実際問題としてできていないようだ。各部門の評価が優先されて社内コンセンサスが取れないのが本音のようである。
 そこで重要なのがコンプライアンス遵守の企業文化なのだが、大企業ほどグローバル化の影響が強く、利益至上主義に走りやすいし、過去からのやり方を変えようとしない“空気”らしきものが存在する。
 その対策として組織内を中小化するために分権制組織を試行錯誤するのだが、なかなかこの“空気”を払拭する手立てとまでには至っていないのが現状のようだ。
 今回の神戸製鋼や東レのデータ改ざん問題に関して、中堅素材メーカーは意外と冷静、客観的に大企業分析をしている感じであった。


2018年06月08日配信


前の記事へ 記事一覧へ戻る 次の記事へ