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企業・組織の経営倫理を推進する人材を育成・支援するNPO法人

トップページ > 経営倫理情報 > ニュースダイナミクス > 2019年01月07日配信記事

特別座談会
22期講座を振り返って

NPO法人日本経営倫理士協会(ACBEE)の経営倫理士資格取得のための第22期講座が、2018年11月に修了し、企業でコンプライアンス業務などを担う社会人を中心とした計35名が新たに「経営倫理士」となった。「企業倫理士」の資格取得には、約半年間にわたる全17講座の受講を前提に、2回の小論文形式のリポート提出、さらに最終筆記試験と面接試験合格が要件となっている。また、講義中やその後の時間に受講生同士が交流し意見交換できる機会を設け、積極的な参加を促している。第22期の修了生は、講座受講を通じて、コンプライアンス、リスク管理、CSRをはじめとした新しい多様な知識や同期を得て、第一線に戻っていった。

12月12日、22期3名の修了生に日本記者クラブ(千代田区内幸町)に集まっていただき、半年間の講座を振り返ってもらった(写真)。


異業種の受講者と知り合いに…

●体系的に学べ理解が深まり貴重な交流も

仲井 直子さん

〈仲井〉異業種間交流ができたことは貴重であった。異業種で同様の職種を担っている人たちと知り合えたことで、相談できる相手ができた。また他業種の状況を垣間見ることができた。さらには、社内では行動規範研修が年1回あるが、その中で習ったことは言葉だけの理解だった。本講座からは体系的に学べて、言葉だけではなく考え方に至るまで理解でき、内容が腑(ふ)に落ちた感じがした。事例を交えて聞けたことも自分の理解を促したと思う。

〈桑ア〉一言で言って楽しかった。講義内容が面白かったことは言うまでもなく、社会人になってから、論文を書く、面接を受けるといった機会はなかったので、とても新鮮な感覚で取り組むことができた。また、同期生の皆さんとのご縁をいただけたのもありがたかった。業種が少し違うだけで、考え方も違うのだなあと実感することができた。期間中に行われた講義の後の懇親会では、少々踏み込んだ話もできた。

〈紺野〉受講前は、半年間という期間、講義回数、開催場所を思うと、大変だと思っていたが、このような17回にわたる講座形式だったので、内容を深く理解できた。共に学ぶ仲間がいたからこそ楽しく励むことができたと思っている。同期の皆さんと、これから先何かあった時に、「聞いてみよう」と思える関係づくりもできた。これはE-ラーニングでは得られない。本講座に送り出してくれた法人に対しても、自分にかかる期待を素直に感じることができた。受講は、自分のためになったことはもちろん、法人のためにも頑張ろうと思えた。

〈千賀〉一般的に、論文や面接を含んでいる資格講座はほとんどない。文章化するとその方の考え方が表れるものだ。また、自分で調べて書くと理解が一層深まる。皆さん良く励んでくださった。当資格講座は遠方からの受講者も少なくない。例えば、大阪のある企業から毎年1名の受講生が参加されている。東京までの出張費は受講よりも高く掛かっていると思うが、組織の皆さんに受講の意義をご納得いただけていて、職場のバックアップもあるようだ。

〈仲井〉このたびの論文試験では、時間制限以内に書き上げることに不慣れで、間に合わなかったらどうしようと思い、最後文字が震えてしまった。貴重な経験であった。

〈桑ア〉最終試験では、手書きでの論文作成であったが、普段ペンを使って書かなくなっているので、それだけでも大変だった。論文を書くことも新鮮であった。

●具体例を交えての講義で正しい倫理の視点

〈仲井〉どの回の講義も一流の先生方のお話を伺えた。皆さま素晴らしい先生方であった。中でも名取はにわ先生による「ダイバーシティ経営と女性活躍」では、我々世代にとっての先輩世代にあたる女性講師の体験を伺えたことは意義深かった。諸先輩が女性として働いてきてご苦労もある中、状況を改善してきてくださって今があることを学ばせていただいた。仕事をしていく中で限界を感じたり、諦めの気持ちが出てくることもあったが、今回このような受講の機会を頂いていることにも改めて感謝して、今後社会に何らかの形で返していきたいと思えた。
 小山嚴也先生の「経営倫理とCSR」の際、雪印乳業不祥事について詳しくご説明いただいた。一般的に知られている以外にも、詳細やその後の状況を知ることができた。雪印乳業が、法令よりも厳しい基準で業務を行っていたのに、あのような事態になったことを知り、どの会社でも起こり得ることであると思った。法令を守っているだけでは不十分で、それ以上に倫理的な視点から何が正しいかを判断していかなければいけないということを、具体例を通じて学ぶことができた。先生の語り口も含めてとても印象に残っている。

〈桑ア〉すべての講座が勉強になり大変面白かった。印象に残ったという部分で言うと、小山先生の、マイクがいらないのではないかと思うようなパワフルな講義、そして平野先生の講義の「技術者倫理」は初めて聞いた言葉であった。また、辻先生からは、「だれにも悪いことをさせてしまわないような『仕組み』が必要だ」というお話も印象的であった。さらには、大田先生の会計学の講義では、淡々と話しながらも核心をついていて、印象に残った。大田先生から、「監査法人が不祥事を発見するケースは一握りでしかない。その一方で内部通報による発覚の方が格段に多い」と聞き、自分の会社を省みる気づきとなった。ここで挙げた講義に限らず、すべての講義が自社の状況と直結して考えることのできる内容であった。

紺野 智子さん

〈紺野〉どの先生の講義も、もう一回聞きたいと思う内容であった。個人的には、名取先生のお話しを伺い、こうやって先輩たちが切り開いてくれて、今私たちが働けているのだという気持ちが湧いて、とても勇気をいただけた。平野先生の「産業事故の防止と技術者倫理」も深く考えさせられた講義であった。私が所属する社会福祉法人は、多くの専門職が働いている。組織のピラミッドの縦ラインの指示だけを聞いていると、方向性を間違えてしまうこともあり得る。そのような場合、どのように声を上げるべきか、専門職としてどのように考えて仕事すべきかを思案させられた。働く職員の皆さんにも、このようなことを考えることは決してマイナスではないと伝えていきたい。

 さらには、寺原先生の「LGBTと企業の対応」の講義では一人一人の人権を考えさせられた。自分は、人権問題を先駆的に取り組まなければならない業界にいる。普段はどうしても、困りごとを主張する方のほうに注意がいきがちだ。一方で、社会には自分が抱えている苦しみを容易に話せない方がたくさんいることを学んだ。先生からの、「押しつけになってしまうことなく、取り組んでいくことがこれからの流れではないか」というお話は説得力があった。私が前日受講した、人権についての研修の中で、LGBT当事者の方から、具体的にこういうことに配慮してほしい、との要望などを伺った。早速持ち帰って内容を報告し、具体的な対応を提案し、実際に取り組めそうかどうかの相談ができた。事前に寺原先生の講義を受けていたので、昨日の研修も体系的にストンと落ちるところがあって、自信をもって迅速に提案ができた。どの先生方の講義も、学問的な内容のみならず、昨今の時事問題に絡めて、事例と共にお話ししてくださったので、社会人の我々にもストンと理解できた。例えば、アンケートで性別を聞かれることや、学校や職場での男女別トイレ使用の問題などの、普段当たり前と思っていた日常生活に多くの苦痛を感じている人がいるということを知った。

〈桑ア〉悩みを抱える人たちが親にも言えない、そして自殺者も多くいるという実態を初めて知った。 また、今回講義でLGBTについて学ぶことは、まさに今主流のダイバーシティについて考えることでもあった。

〈紺野〉先日娘たちに「男の子でも男の子を好きな人っているんでしょ」と聞かれた。学校で習ってきたようだった。「もし私が、女の子が好きだって言ったら、お母さんはどうする?」と聞かれた。「人間として支え合って責任をもって生きていくことの方がよっぽど重要で、性別はさして重要でない」と伝えたところ、驚いていた。私は、子供たちの世代でも、同性を好きになることは非難されると思っていたことに、逆にびっくりした。

〈桑ア〉小山先生の講義でも触れられていたSDGsにジェンダーに関することも含まれている。そのこともあり、いま学校教育の場でもSDGsのいろんなテーマが取り上げられているそうだ。今後ますます幅広く議論されるようになっていくのではないか。

〈仲井〉私たちが子供の時は、そのような教育がなく知識がなかった。今回10人に1人くらいが性的マイノリティーで、悩んでいる方々が身近な周りにいるであろうことを知って、子供の時に教育を受けるのは良いことだと思った。先入観がないうちに学ぶことで、多様性を自然なこととして認識するようになるのではないか。

●上層部への提言もしっかり根拠あるものに

〈仲井〉私が所属する部署では社内内部通報窓口運営をしている。そこに来る相談を受ける際、どこが問題なのかを考えながら対応している。受講後、考え方が変わって、「よくあるよねー」とこれまで軽く見ていたことが重要に見えてくるようになった。「今までこれで問題なかったから大丈夫」「よくあることだから問題ない」では済まない、という気づきが出てきた。「今はこれでいいのか」「会社にとってどうなのか」というように、問題を探すような視点を持てるようになった。
 異業種の仲間とつながりができたことも大変貴重である。今、業務で社内の教育ツール作っているが、他社の方々と情報交換をして他社の状況を知ったり、助言を頂いたりして、広い視点が持てるようになって、業務に生かせている。

桑ア 博文さん

〈桑ア〉もちろん今後役に立つ。しかし、それを言葉で語ってもなかなか伝わりにくいと思う。やはり、行動で「資格を取りました」ということを示していきたい。業務にどのように生かし、実践していくかが求められている。経営倫理士となった、先輩方も含めた私たち一人一人がしっかりやっていくとで、この資格がもっと今以上に大きな資格になっていくと思う。大げさかもしれないが、自分自身がその一つの使命を担っているものと考えて、頑張っていきたい。

〈紺野〉日々の業務では、講義で頂いたレジュメをたまに振り返りながら考えたり、説明する際の参考にしたりしている。自分が所属する組織の決定権は上層部にあるが、自分がそこに提言する際、根拠のあるものとして、自分の考えを伝えることができている。業務の役に立っていることをすでに実感している。個人的には、教養が深まったと感じている。社会の動向にさらに興味を持つようになった。

〈千賀〉資格取得の効果は、すぐ見えるものではないが、実際に何か問題に直面した時には、ここで得た知識や倫理観が即生かされるであろう。 今後も自己研さんしていっていただきたい。経営倫理士修了生の自主勉強会も行われている。3カ月に1回ほどの頻度で集まり、毎回テーマと担当者を決めて、発表やディスカッション、懇親会を行っている。さらには、当協会は大学の「ビジネス倫理」という学科のボランティア講座を提供しており、経営倫理士が講師として活躍している。

●ホットニュースを事例に交流時間も増やして

〈千賀〉細かいことでもなんでも構わないので率直なご意見を伺いたい。

〈仲井〉会場スペースについて、横長で前方にスクリーン画面が二つあり、先生がどちらを見たらいいかわからないようであった。また受講側からも若干見づらかった。
 講義内容については、今後も新しい時事ニュースをどんどん入れていただけるとよいと思う。現在ゴーンさんの件が話題になったり、働き方改革で法制度が変わるなか、残業時間が一層厳しくなるなど日々社会状況が変化している。このような時事ネタを積極的に取り入れてもらえると興味が持てる。

〈千賀〉利便性のよい場所だと、講義室レイアウトが使いにくい場合が多い。今後の課題とする。講義内容は、大学の固定講義ではないので、ホットニュースを入れてほしい、と先生方に要望を出している。

〈桑ア〉講義を聞いていて、もっとゆっくりじっくり聞きたいと思った。また、個人的な部分があるかもしれないが、受講者の中で外食産業からは私だけであった。協会からもっと外食産業へのアプローチがあると受講者が増えていくのではないか。経営トップの方々へ千賀専務理事からアプローチをお願いしたい。

〈千賀〉努力していきたい。昨今どの会社もコンプライアンス室、CSR室を強化している。これまで経営陣の関心事は営業成績が中心であったが、近ごろコンプライアンスを重視するように変わってきている。

〈紺野〉法人からも十分な時間をもらい半年通わせてもらったが、あっという間であった。1年間あってもよかったと思っている。合宿という形があっても面白いのではないか。また、他の受講者の皆さんのことを知る機会は、懇親会や雑談の場だけであった。クラスの中でももっと横のつながりが持てるような時間があればよかった。業種別、世代別のグループ分けも面白いかもしれないと思った。

〈千賀〉時間が限られていて、参加者の皆さんも忙しくなかなか難しい面もあるのが実情である。修了生の皆さん方で自主勉強会も実施されている。皆さんにはそれぞれ自分の得意分野、専門分野を極めていってほしいと願っている。
 本日は、貴重なご意見を頂きありがとうございました。今後の一層のご活躍を祈念しています。


2019年01月07日配信

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