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トップページ > 経営倫理情報 > ニュースダイナミクス > 2018年11月12日配信記事

ACBEE特別シンポジウム2018開催

「内部通報」の浸透・定着で「認証制度」導入へ
企業不祥事を防ぐ“決め手”に満席の会場

日本経営倫理士協会(ACBEE)特別シンポジウムが11月5日、関西大学東京センター(千代田区)で開催された。9回目となる今年のテーマは、「内部通報」。不祥事を未然に防ぐ決め手となり得る内部通報制度の浸透・定着をより強力に推進するため、国(消費者庁)が同制度に関する「認証制度検討会」を発足し、2018年4月に報告が公表された。いま企業など各組織は、新たに導入される「内部通報認証制度」への対応が喫緊の課題となってきた。
 シンポジウムでは「内部通報」の浸透や「認証制度」の導入に焦点を当て、学術、行政、企業、メディアから専門家を講演者に約100人の参加者を集め、それぞれの視点から活発な討論を行った。関西大学社会安全部と共催、経営倫理実践研究センター・日本経営倫理学会・情報システム学会の協賛と協力を得た。

関心の高さを思わせた満席の会場=関西大学東京センター

シンポジウムの第一部は、水尾順一氏(駿河台大学名誉教授・博士(経済学))と大森崇利氏(消費者庁・消費者制度課・企画官)が、大手企業導入率99%といわれる内部通報制度の現状、および目前に導入が迫る「内部通報認証制度」の要諦、制度の導入に向けた行政の取り組みについてキーノート・スピーチを行った。
 続いて第二部は、佐藤善彦氏(NECフィールディングCSR企業行動推進部エキスパート)が自社のヘルプライン窓口の取り組み状況や、自社と経営倫理実践研究センターに属する複数企業のヘルプライン部門従事者と連携した研究会の成果について報告した。続いて福本容子氏(毎日新聞・諭説委員)が、経済部での記者経験を踏まえ、バブル崩壊後の金融業界数社の企業不祥事発生時におけるメディア対応の実態を紹介した。メディア対応を含む事後対応の失敗によって、倒産や廃業に至るほど事態が深刻化するケースは珍しくなく、日常からの広報担当と経営者間の情報共有を含めた連携の重要性を提言した。
 第三部のパネルディスカッションでは、発表者が会場参加者からの質問事項に答える形で討議を行った。内容は認証申請の事務手続きに関することから、認証取得後に企業が不祥事に見舞われた場合に、増幅し得る社会批判についての所論など、多岐にわたった。
 最後に全体のまとめとして、野一彦氏(関西大学社会安全学部教授・博士(法学))が、全スピーカーの訴求点を振り返り、不正の芽を早期に摘み自浄作用を図るには、内部通報制度の実効性向上も含め、「風通しの良い社風をいかにつくるかの一点に尽きると言える」と締めくくった。
 会場は、企業のコンプライアンス部門に所属する経営倫理士をはじめ、経営倫理研究センターの会員企業の実務家などが集まり満席となった。

基調講演で「内部通報認証制度」のキーポイントを解説する水尾順一駿河台名誉教授(左)と制度導入に向けた行政の取り組みを説明する大森崇利消費者庁消費者制度課企画官

■ キーノート・スピーチの概要

はじめに、水尾順一氏が「世界が注目する『内部通報認証制度の要諦』」と題し、このたびの認証制度の最終的な狙いは、不祥事の発生によって従業員をはじめとするステークホルダーが、多大な損害を被ってしまうような事態を根元から断つことであると説明した。昨今の企業不祥事の発覚は、内部告発によることが多い。本来、組織は日常的に部下が上司と気軽にコミュニケーションできるような、風通しの良い環境づくりがなされ、社内で問題の早期発見、早期対応を図れることが理想である。内部通報制度は、公益通報者保護法が施行され10年以上経過する現在でも、企業によってはその実効性が不十分な場合も多い。2018年末から2019年にかけて導入が予定されている内部通報認証制度が、企業の内部通報制度の浸透・定着をより強力に推進するであろう、と展望を述べた。
 先進的な取り組みを行う企業事例として、利用しやすい内部相談・通報制度を設け、従業員にその体制を積極的に啓発している国内外企業の具体例も織り交ぜながら、実務家が自社で実施するうえでヒントとなり得る情報も紹介した。

続いて大森崇利氏は、「認証制度導入に向けた行政の取り組み」と題し、現状の内部通報制度に関する課題や、認証制度の概要などを説明した。内部通報制度の導入率は、大企業の場合すでに99%(平成28年度消費者庁調査)に至っているという。しかしながら、多くの事業者が、社内規定に利益相反の排除、経営トップの役割、通報者へのフォローアップなど重要な事項について規定していないのが現実である。通報制度が形式だけにとどまっている事業者も少なくない。通報者が安心して利用できる内部通報制度を整備・運用している事業者においては、従業員らからの警鐘が早期に経営陣に届き、自浄作用により問題が未然防止・早期発見される可能性が高くなるであろう、と述べた。なお、認定に向けた審査基準は、企業に内部通報制度の継続的な維持・改善を促すものになっているという。

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認証制度のシンボルマークは、内部通報(Whistleblowing)を活用した優れたコンプライアンス経営を行う事業者であることを示すとともに“右肩上がり”や“企業価値向上”といったイメージを伝えるという観点から、「W」を強調したデザインとなっている。企業は、Wマークを取得することで、様々なステークホルダーに安心や信頼の発信が可能となり、レピュテーションや業績の向上につながることが大いに期待される。

(参考)認証制度のシンボルマークのイメージ
[出典:内部通報制度に関する認証制度の導入について(報告書)
(平成30年4月 内部通報制度に関する認証制度検討会)]

2018年11月12日配信

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