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トップページ > 経営倫理情報 > ニュースダイナミクス > 2016年12月01日配信記事

「時間も専門家もいない」「予期せぬ死亡の判断難しい」
   医療事故の調査に“限界”も

 鳴り物入りで始まった医療事故調査制度が1年を経過し、課題が見えてきた。 最大の課題は事故を起こした医療機関の対応が不十分なため、遺族の納得を得ることが難しいケースが少なくないことだ。 中には遺族からの聞き取りを行わずに調査報告書をまとめるなど、制度の存在意義が問われるような報告事例もあるという。 背景には調査するかどうか─の判断が医療機関に委ねられていることがある。 再発を防ぐには医療機関のより積極的な取り組みが不可欠になっている。

■消極的な医療機関

 第三者機関の日本医療安全調査機構(通称、医療事故調査センター)の発表によると、昨年10月から今年10月末までに報告された事故は423件。 同センターは「当初の予想(年間1300〜2000件)より相当少ない」と医療機関の対応の遅れを認めている。 診療科別では、外科、内科、消化器科、整形 外科などの順に多かった。
 このうち医療機関が院内調査の結果を同センターに報告したのは183件。 医療現場には、依然として「医療に起因する “予期せぬ死亡”の解釈や判断が難しい」「内部調査する時間も専門の人材もいない」「調査結果によっては刑事責任を 問われかねない」などを理由に挙げ、制度の活用に消極的な意見が聞かれる─という。 特に医師が少ない診療所や中小病院の立ち遅れているようだ。
 一方、医療機関や遺族などから同センターに寄せられた相談件数は1990 件。その後、同センターに調査(再調査)を 依頼した件数は16件(うち遺族13件)にとどまった。 患者支援団体は「遺族が制度の仕組みを知らず、医療機関の報告に不満があっても次のステップ(センターへの調査依頼) へ進めないことが多い」と話し、国と地方自治体に制度の普及と遺族支援の強化を求めている。

■予想を超える打撃

 こうした事態を解消するため厚生労働省は今年6月、省令を出し、調査対象に当たるかとどうかの判断基準を共通化することや、 医療事故調査センターが窓口になって遺族の要望を医療機関側に伝えること─など、運用を改善した。
 また大学病院団体や日本医師会などを制度支援団体として、判断基準や院内方法の手順などを全国共通化する考えを示し、 医療機関に積極的な運用を促している。
  医療事故の隠ぺいや、ずさんな内部調査が行われた場合の反動と経営的な打撃は、予想以上に大きい。 腹腔鏡手術の失敗を放置して、次々に患者を死亡させた群馬大学病院がその典型だ。
 14年11月の発覚後、特定機能病院の承認を取り消されたり、がん診療連携拠点病院の資格機関を失ったりした。 その結果、会計監査院14年度と15年度の財政調査によると、同病院は2年間で10億6千万円の減収となり、 今でもガバナンス強化や支出削減を迫られている。
 それだけではない。今秋の医師臨床研修マッチングでは、研修医受け入れ定員63人に対して内定者は16人、 充足率25.4%。新人医師からも嫌われ、人材の育成や確保に暗雲が立ち込める事態を招いている。(楢)

2016年12月01日配信

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