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トップページ > 経営倫理情報 > ニュースダイナミクス > 2016年12月01日配信記事

「過労死」待ったなし長時間労働
   電通を強制捜査、政府は初めての「白書」

 過労死につながる長時間労働の是正が、待ったなしのところに来ている。厚生労働省は、 女性新入社員が過労自殺した大手広告会社の電通本社(東京都港区)と関西、京都、中部の3支社を2016年11月に強制捜査、 パソコンの使用実態なども調べ、法人としての電通と労務・人事担当の幹部役員らを12月28日、 社員に違法な長時間労働をさせた労働基準法違反容疑で東京地検に書類送検、石井直社長は1月に引責辞任すると表明した。 一方、政府は同10月、過労死等防止対策推進法に基づく初めての「白書」を閣議決定した。 安倍政権が掲げる「働き方改革」にも柱の一つとして長時間労働の是正が盛り込まれた。

 女性社員・高橋まつりさん(当時24歳)は東大を卒業、15年4月に入社。本採用になった10月以降に業務量が増加して、うつ病を発症。12月25日、母親あてに「仕事も人生もとてもつらい。今までありがとう」というメールを送り、都内の社宅で自殺した。労働基準監督署の調べによると、うつ病発症前の残業時間は月約105時間に達していたが、会社の勤務記録では労使協定で定めた範囲内に収まっていた。
 厚労省は、違法な時間外労働が全社で常態化している疑いがあるとして、労基法に基づく「臨検」と呼ばれる任意の立ち入り調査を16年10月に実施。提出された勤務記録と、実際の在社時間が分かる入退館記録を突き合わせた結果、複数の社員が労使協定の上限を超えて違法な残業をしていた疑いが浮上したため同11月7日、強制捜査に切り替えた。電通は12月に入って、「取り組んだら放すな、殺されても放すな」などの言葉が並ぶ仕事の心構えを示した「鬼十則」を2017年の社員手帳から削除、管理職の考課に部下の評価を取り入れる「360度評価」や過重労働問題への取り組みで専従役員制度を1月から導入することも正式に発表した。ワークライフバランスの改善に向け、すべての局で有給休暇取得率50%以上を目指す、としている。

 「過労死等防止対策白書」は、16年10月7日に閣議決定された。奇しくも高橋さんの遺族と代理人弁護士が、まつりさんの自殺が長時間の過重労働によるものと労災認定されたと記者会見して明らかにした当日だった。過労死等防止対策推進法(14年11月施行)に基づく初めての白書で、過労死ラインとされる月80時間を超えて残業をした正社員がいる企業が23%に上ることや、15年度の過労死の労災認定が96件、過労自殺(未遂含む)の労災認定が93件あったことなどが盛り込まれている。
 白書は法施行後2年たっても、長時間労働の悪弊が、日本の企業に染みついて離れないことを明らかにしたといえる。人減らしに伴う1人あたりの仕事量の増加、成果主義の人事管理導入によるプレッシャー、横並び意識が強く帰宅しにくい職場の雰囲気などが、先進国の中でも際立つ長時間労働の原因になっているとの指摘もある。
 労働基準法では、労働時間を原則1日8時間、週40時間と規定しているが、労使が同法36条の協定(三六〈さぶろく〉協定)を結べば、事実上、「青天井」で長時間労働が可能になる。 政府は今後、三六協定の在り方を見直し、「絶対的な上限規制」の導入を検討する方針だ。労使とも過労死防止へ向けて発想の転換を図り、歩み寄る時が来ているといえよう。

 安倍政権が掲げる「働き方改革」の柱は、非正規労働者の待遇改善を目指す同一労働同一賃金の導入と、正社員を中心とした長時間労働の是正だ。経営者側は日本の雇用環境になじまないとして後ろ向きの姿勢だが、 将来の労働人口の減少などを考えれば、避けて通れない問題であろう。過労死は、英語でも「karoshi」という日本語の読み方で表記されるという。 このような日本独特の「病理現象」は国際的にも恥で、早急に解消されねばならない。労使が力を合わせて是正に取り組めば、「働きやすい会社」として企業価値も向上するのではなかろうか。

■過労自殺問題に「CSR視点」を…川人博弁護士

 「過労死110番」の活動に参加し、過労死弁護団全国連絡会議幹事長の川人博弁護士が11月23日、日本記者クラブで会見した。 同記者クラブ企画「働き方を問う」の第1回。
 女性新入社員が自殺した大手広告会社の電通に対する批判が高まる中での川人弁護士の発言だけに注目された。同氏は長年、過労死訴訟に関わってきており、戦前の織物業者などから直近の電通問題までの具体例を挙げて解説した。
 過労死の深刻な実態について、「仕事絡みの自殺が2015年は2000件以上だったが、それらに対する労災認定は4%に過ぎない」と指摘、過労死をなくす健康な職場づくりの大切さを訴えた。そのためには終業時から翌日始業時まで一定の間隔を義務付ける 「勤務時間インターバル規制が必要」と提言した。また、「CSR視点による健康経営の意義」を強調したのも印象に残った。

2016年12月01日配信

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