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2025年問題の処方箋(4)
薬価マイナス改定 消費増税対応で明暗


ジャーナリスト 楢原 多計志

2019年10月1日の消費税率引き上げに応じ、その影響分が診療報酬や介護報酬などに上乗せされることになった。日本医師会や介護団体の関係者は一応に安堵の表情を見せている。一方、薬価はマイナイ改定となり、医薬業界では「改定のたびに薬価が下げられ、このままでは新薬開発費が枯渇してしまう」と不満が渦巻いている。明暗を分けた19年度改定の裏事情と医療業関係者の本音をまとめた。

■概算要求の自然増1200億円カット

18年12月17日、麻生太郎財務相と根本匠厚生労働相による31年度予算案をめぐる大臣折衝の結果が発表された。ポイントは二つ。医療、年金、福祉の社会保障費の伸び(自然増=高齢者増加などによる給付額の増加)をどこまで抑えるかと、もう一つが消費増税の影響分を診療報酬や介護報酬、障害福祉サービス報酬への配分だ。

社会保障費の伸びについては、昨夏の段階で厚労省は外堀を埋められていた。安倍政権が19年度経済財政の基本方針である「骨太方針2018」で19年度予算では自然増分を削減する方針を決定しており、後は年末の予算折衝でいくら削るか、削減額を協議するだけとなっていたからだ。結果は、厚労省の概算要求額6000億円に対し、1200億円を削減し、4800億円となった。

では、どこをいくら削るのか。政府のもくろみでは、所得の高い被保険者の介護保険料を引き上げる(削減額610億円)、生活保護の給付額を段階的に引き下げる(30億円)。そして薬価の引き上げ(500億円)などによって1200億円をひねり出すという。

■薬価だけがマイナス改定

実際には、1200億円削減に沿い、消費増税の事業経営への影響や市場の実勢価格などのデータを参考にして改定率が協議された。結果は、診療報酬は全体で+0.41%(内訳は医療行為などの医科+0.48%、歯科+0.57%、調剤+0.12%)、医療機器などの材料価格は+0.03%、介護報酬+0.39%、障害福祉サービス報酬+0.44%となった。10月から改定率に沿って今の報酬に影響分が配分される。

しかし、薬価は▲0.51%で唯一マイナス改定となった。消費増税の影響分による改定は+0.42%だったが、これに実勢価格による改定▲0.93%が加味され、その結果、全体ではマイナス改定となった。

どういう理由でマイナス改定になったのか。厚労相が決める薬価と市場価格である実勢価格には差(薬価差)が出る。常に市場原理が働いている。本来、薬価差が大きければ大きいほど、まず製薬会社や卸業者のもうけになりそうなものだが、そうはならない。

外資系の大手製薬会社の執行委員は「日本政府は公的医療保険制度を使って差益を医療行為などの診療報酬へ回している。本来ならば19年度の500億円は我々の利益になるはずのものだ」と憤る。

■「パイの奪い合い」信用失墜を懸念

しかし、厚労省幹部職員は執行委員の見解を真っ向から否定する。「薬価には企業収益が算定されており、実勢価格との差益が全て製薬会社の利益だとう言うのは論外、極論だ」と反論する。

それでも医療関係団体内でも「財務省や厚労省は薬価差の多くを医療提供者(医療機関や調剤局など)の処遇改善などに回し、国庫負担が急増するのを防いでいる」という意見が多い。

医療の在り方を審議する中央社会保険医療協議会(中医協)の公益委員は「薬価差を保険収入の一つだと考えれば、保険料引き下げに特化させて使うべきだろう。医師団体や保険者、製薬会社がパイを奪い合っているような印象を国民に持たれると、公的保険の信用を損ないかねない」と懸念している。


2019年01月10日配信

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