本文へスキップ

企業・組織の経営倫理を推進する人材を育成・支援するNPO法人

トップページ > 経営倫理フォーラム > コンプライアンス春秋+ > 2018年10月18日配信記事

2025年問題の処方箋(1)
垣間見える厚労省の焦り


ジャーナリスト 楢原 多計志

団塊の世代(約800万人)が全て75歳となる2025年まであと6年半。政府は社会保障と税の一体改革を進めているが、順調に進捗しているとは言い難い。ことし4月、医療と介護の報酬が同時改定されたが、基本報酬に上乗せする加算の見直しが中心で、ベースである基本報酬の抜本的な見直しは先送りされた。どうすれば、多くの国民が納得できる改定・改正が実現するのか、医療、医薬品、介護について、それぞれの現状と課題をまとめ、個人的な意見を加えたい。第1回は医療。

■かかりつけ医がキーパーソンに

2年ごとに改定される診療報酬。18年度は3年ごとの介護報酬との同時改定となった。厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)では、医療と介護の連携を重点事項として審議され、医療機関や介護サービス事業者などが一体的にサービスを住民に提供する「地域包括ケアシステム」の推進をめぐる論議が展開された。
 18年度改定のキーワードでもある「地域包括ケアシステム」について、厚労省は「住民が慣れ親しんだ自宅や地域で、医療や介護・福祉サービスを利用しながら安心して人生を終えることができる制度」などと説明している。一方、その裏に社会保障関係費抑制という「最大かつ最重要課題の1つ」(安倍首相)の大きな狙いがあるのは自明だ。
 「地域包括ケアシステム」に関係する改定で注目された基本スタンスがある。@介護と連携して在宅医療や介護施設での看取りを推進するA医療機関の病床再編を促し、「かかりつけ医」の役割を強化するB訪問診療や夜間診療を行う「かかりつけ医」の初診に800円を上乗せするC紹介状無しの大病院受診に5000円以上の自己負担を求めている―点で、特に注目すべきは「かかりつけ医」の評価をより高めたことだ。
 例えば、「かかりつけ医」が複数の医療機関と協力して24時間態勢を整えたり、特別養護老人ホームに出向いて対応したりすると、「継続診療加算」「在宅患者訪問診察診療料」「機能強化加算」などがそれぞれ算定できる。加算が増えたことも18年改定の特徴の1つ。
 またテレビ電話やタブレット端末などのICTを使い、遠隔地の医療機関の専門医から情報提供を受けて診察すると、新設の「オンライン診療料」を算定できることになった。守備範囲が増えた「かかりつけ医」は「地域包括ケアシステム」のキーパーソンだ。

■大病院から在宅医療への流れをつくる

一方、手厚く看護師が配置されている急性期病床の配置基準や「入院基本料」の要件(重症患者の割合を加味)が厳しくなり、入院収入が抑制される。紹介状無しでの大病院受診の自己負担引き上げも医療費抑制の一環だ。
 要は、患者は医療費のかかる病院に入院したり、初診を受けたりせず、身近にいる「かかりつけ医」に診療してもらいたい─というのが「地域包括ケアシステム」の最終目標なのだ。基本報酬より加算を増やし、何が何でも「大病院から在宅医療へ」の流れをつくりたい厚労省の焦りが垣間見える。
 これに対し、医療機関はどう対処するのか。日本医師会などは「本体部分(医療行為などの報酬)が0.55%のプラス改定となったことは評価してよい」とコメントしたが、医療現場では重い雰囲気に包まれている。急性期入院などで潤っていた大病院は慢性的な看護師や一部専門医の不足が深刻化する中で、「働き方改革」で勤務体制の見直しを迫られている。大学病院長は「せめて救急医療の報酬だけでも大幅に引き上げしてほしかった」とぼやいた。次回は「医薬品」。


2018年10月15日配信

前の記事へ 記事一覧へ戻る 次の記事へ