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トップページ > 経営倫理フォーラム > コンプライアンス春秋+ > 2018年05月07日配信記事

薬価から探る医療の行方 (下)
◎中小メーカーは生き残れるか


ジャーナリスト 楢原 多計志

診療報酬とともに2年ごとに見直される薬価制度。厚生労働省は2018年度の見直しについて「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針を示せた」と自賛するが、財務省は厚労省と製薬会社に「創薬コストの低減や製薬会社の費用構造の見直し、業界再編へ取り組むべきだ」と早くも注文を付けている。薬価制度の課題と行方をまとめた。

■薬価またマイナス改定

2018年度診療報酬改定は本体(医科、歯科、調剤)改定がプラス0.55%、薬価・材料がマイナス1.45%。薬価のマイナス改定で生じる財源(国費ベース1555億円引き下げ)にして医療機関などの報酬を引き上げる─という基本構造は変わらなかった。
 診療報酬改定に伴う薬価制度改革の大きな柱は4本。@新薬創出などへの加算を抜本的に見直すA効能追加などによる市場拡大への速やかな対応B新薬のイノベーション評価の見直しC外国平均価格調整の見直し。要は、革新性のある新薬には相応の薬価を上乗せする一方、普及している医薬品は市場の実勢価格に応じて引き下げる―とするものだ。
 具体的には、@新薬の対象を約920品目から約540品目に絞り込むA新薬の薬価基準に収録(収載)の機会を年1回から4回に増やし、そのつど再算定ルールに従って薬価を引き下げるB類似薬の内新薬は営業利益への加算ではなく薬価全体として評価したり、製造原価の内訳を開示度に応じで加算率を設定したりするCメーカー希望小売価格ではなく公的制度の価格リストに基づいて価格を調整する―という内容。
 政府内には、薬価の高い新薬の収載を絞り込んだり、製薬会社の経営実態まで踏み込んで加算を決めたりする今回の取り組みを評価する声もある(厚労省幹部職員)という。

■費用対効果評価は本年度実施の予定

だが、18年度見直しの最大の目玉だった全品目を対象とする「毎年薬価調査・薬価改定」は、医薬業界からの激しい反発もあり、2年遅れの20年中の設定へと延期された。現行の2年ごとの改定では「市場を反映していない」という批判に応えたとは言い難い。
 また財政当局が以前から要求していた「費用対効果評価」(薬の効果によって薬価を設定)の導入も本年度中に実施する予定だが、まだ評価方法に技術的な課題があり、予定通り実施できるかどうか、流動的だ。
 財務省は、4月11日に開かれた経済財政等審議会の財政制度分科会に社会保障制度改革案を提出した。薬価制度では厚労省に毎年薬価改定や費用対効果評価導入などの着実な実施を求める一方、製薬会社にイノベーション推進に向けて創薬コストの低減や販売管理コストの低減、業界再編などを要求し、財政措置に依存している経営姿勢を批判した。
 製薬会社は、これまでにも抗がん剤「オプジーボ」のように利益確保の柱である高額薬を強制的に大幅に引き下げたりする医薬行政への不満を募らせている。
 大手メーカーは海外進出や外国企業の買収で活路を求めたりしているが、10年を経過した長期収載品が後発品(ジェネリック)の薬価まで段階的に引き下げられることになり、中小メーカーの経営悪化が懸念されている。


2018年05月07日配信

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