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トップページ > 経営倫理フォーラム > コンプライアンス春秋+ > 2018年02月27日配信記事

危機管理と記者会見 <第3回>


いま「企業危機」は増大…、重要な広報(記者会見)の役割

■長期間、社長会見しなかったタカタ
【企業危機(=事件事故、不祥事、経営危機)が拡大している背景】
○国内市場の縮小・グローバル競争激化・CSR・ESGの要請
○「内部告発」の常態化(2000年の三菱自工のリコール隠しの外部告発〜)
〇インターネットとSNSの浸透=マイナス情報が一挙に拡散
○法令強化と法令違反の摘発強化
○世間の見る目(世論)の厳しさ=メディア報道リスクの増大

【危機(リスク)の顕在化を防止するプロセスのポイント】
〇実効性のある内部通報制度
 2006年の公益通報者保護法の制定によって内部告発に抵抗感が薄れてきたとも言えますが、会社にとって深刻な問題ほど内部告発には相当な勇気がいることも現実です。監督官庁やマスコミに告発される前に内部通報(告発)してもらうことは企業にとって実は有難いことなのです。そのために「(告発者を守る)社長の覚悟」と「風通しのいい企業風土」が絶対条件です。東芝が破綻に至った(社長の指示による)粉飾会計が、もっと早く(8年遅れ)証券取引等監視委員会に内部告発されていたらここまでの経営危機には至らなかったかもしれません。

〇迅速なタイミングの情報開示(記者会見)
 不祥事の記者会見はタイミングが遅れるほどダメージが大きくなります。不祥事を把握したら、いつだれが記者会見するかの適切な判断が非常に重要です。そのために(渋る)上層部を(広報部を窓口に)説得することが必要な場合もあります。適切な情報開示を怠り続けて倒産にまで追い込まれたのがエアバックの世界3大メーカーのタカタです。海外での事故の発生を把握しながら責任を認めず、10年近く社長が記者会見をせず、2016年に民事再生法の申請に追い込まれました。

〇広報部を中心に「危機の芽」を把握する体制
 最近の「危機の芽」は、非主力事業や子会社にあることが多いので目配りが重要です。最近の事例では三菱マテリアルや神戸製鋼のデータ改ざんが子会社で、次々に判明して親会社の信用が失墜しました。そのために広報部を事務局とした関連スタッフの定期的なミーティングで「危機の芽」を共有化しておくことが必要です。

〇メディアトレーニングの実施
 (特に)謝罪会見に臨む場合の、記者との応答の基本、場の雰囲気に飲まれないための基本などを仮想体験(トレーニング)することをメディアトレーニングといいます。不祥事会見に一夜づけで臨んでは必ずボロが出ます。特に幹部社員がメディアトレーニングで学ぶべきことは、基本的なスタンス(行動・態度)、記者会見でいうべきこと言わざるべきこと、などです。(本シリーズA参照) トップが謝罪会見すべき案件ほど、不意打ちを食らうと社長以下、関係者が混乱する可能性が大きいので、“備えあれば憂いなし“の為です。もっとも専門のコンサル会社に依頼すると高額なので、広報部を社内講師とする社内メディアトレーニングの実施も考えるべきです。

【危機が顕在化した後の(緊急)広報(謝罪会見)のプロセスのポイント】
 本シリーズの@とAを参照してください。さらに不祥事会見の重要な基本があります。
〇“初期対応がすべて”(その後の流れが決まる)
 “ひとは起こしたことで非難されるのではなく、起こしたことにどう対応したかで非難される”が不祥事広報の原理原則です。有名な失敗例が2005年4月25日に発生したJR西日本福知山線の脱線転覆事故の広報です。事故発生後のJR西日本の謝罪会見は、世間の怒りの大きくするばかりの「責任転嫁」のオンパレードでした。 それは緊急会見の常務執行役員安全推進部長の「置石の可能性」発言から始まり、社員の「遺体の確認は葬儀屋に任せています」発言まで飛び出し、最後には社長の「情けない社員」発言まで出て世間をあきれさせました。

〇メディア(=世論)を味方につける「誠実さ」
 謝罪会見は、情報開示を通じてメディアと(その報道の影響力による)ステークホルダーに企業の「誠心誠意度」を感じてもらうことがもっとも重要です。謝罪会見は社会に向けた唯一最大の『説明と責任表明のチャンス』なのです。半日遅れ、1日遅れ、1週間遅れ・・・では記者会見の効果をどんどん失っていきます。また「説明責任」が不十分だと、かえってメディアを怒らせ、社会的批判を増幅させます。社長が出るべきだとマスコミは考えているのに出てこないと、出てくるまで要求されます。緊急記者会見は、事態の”早期収拾の切り札”であることを認識しなければいけません。

【危機の(一応の)終息後に企業イメージ・レピュテーション(評判)を修復させるプロセスのポイント】
 マスメディアは不祥事の取材報道には熱心ですが、不祥事報道が沈静化するとその後の報道には熱心でありません。だから当事者がWEBサイトを使ったり、マスメディアに働きかけたり、工夫をして企業社がどう変わったか変わろうとしているかを積極的に発信しなければいけません。レピュテーションマネジメントと言います。
〇責任者のけじめ
 東京電力の福島原発事故とJR西日本福知山線脱線転覆事故のいずれにおいてもトップは裁判で無罪を主張し続けました。法的責任はないとしても世論は道義的責任を問うていることとの溝は大きく、企業イメージの修復は遅々として進まないことになります。

〇継続的な情報開示(説明責任)
 7年前に(チェルノブイリ事故に次ぐ)過去2番目に大きな原発過酷事故を起こした原子力村(政府・行政・電力会社)の「原発再稼働」のための地域社会や国民とのコミュニケーションは十分ではありません。責任者が明確でないことや廃炉問題・使用済み燃料の埋設場など基本的方向が見えないことが障害になっています。それでも原発が必要な理由は電力会社の広報活動に期待するしかありません。

〇CSR・ESG活動の積極的発信
 不祥事を起こした企業は、特にCSR(企業の社会的責任)やESG(持続可能な企業活動)の取り組みを具体的に社会に向けて地道に情報開示していくべきです。

■他社の失敗例を他山の石に…
まとめ 「他社のふり見てわが社のふり直せ」が座右の銘!
 危機管理広報は広報部だけでやることではありません。幹部社員は無論のこと、従業員の総てが立場立場で理解しておくことが不可欠です。そのためには他社の失敗例を他山の石として、「わが社だったら起こらないだろうか、わが社で起こったらあんなまずい対応はしないだろう」などのコンセンサスづくり(研修や自己学習)を継続していくことが非常に重要です。

(連載おわり)


2018年02月27日配信

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