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外国人技能実習機関の監督・指導(28年)
7割超す法令違反、送検は40件


厚生労働省から、全国の労働局や労働基準監督署が、平成28年に技能実習生の実習実施機関に対して行った監督指導、送検などの状況が公表された。
 外国人技能実習制度は、外国人が企業などでの実習を通して技術を習得することにより、母国の経済発展を担う人材を育成することを目的としている。しかし、実習実施機関では、労使協定を超えた残業、割増賃金の不払い、危険や健康障害を防止する措置の未実施などの労働基準関係法令に違反する事例が依然として続いている。

■主な違反は労働時間、使用機械の安全基準

全国の労働基準監督機関では、実習実施機関に対して5,672件の監督指導を実施し、その70.6%に当たる4,004件で労働基準関係法令違反が認められた(違反は実習実施機関に認められたものであり、日本人労働者に係る違反も含まれる)。
 主な違反事項は、@労働時間(23.8%)A使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準(19.3%)B割増賃金の支払い(13.6%)の順に多かった。
 監督指導した事例としては、技能実習生の深夜労働について、割増賃金は適正に支払われているが、深夜労働時間数が賃金台帳に記載されていないケースがあった。また、特別延長時間1カ月80時間の36協定を届け出ていたが、繁忙期の人手が不足し、技能実習生11人に1カ月で最長130時間程度の違法な時間外労働を行わせていた事例もあり、監督指導した。
 一方、技能実習生から労働基準監督機関に対して労働基準関係法令違反の是正を求めてなされた申告は88件であった。
 主な申告内容は、@賃金・割増賃金の不払い(83件)A約定賃金額が最低賃金額未満(12件)B解雇手続きの不備(11件)の順に多かった(申告事項が2つ以上ある場合は、各々に計上)。

■技能実習生に時間外割増賃金、支払いせず

技能実習生に係る重大・悪質な労働基準関係法令違反が認められた事案として、労働基準監督機関が送検した件数は40件であった。この中で1,200万円を超える賃金不払いと、1カ月最長120時間程度の違法な時間外労働を行わせたことにより送検されたケースがあった。
 縫製業の事業場の違法送検事案で、技能実習生に対して時間外労働に対する割増賃金が支払われていないとの情報提供があり、立ち入り調査を実施。押収した資料などから、約2年間にわたり、技能実習生5人に対し、「国民年金積立」などの虚偽の名目で違法に控除したり、時間外・休日労働に対して時間単価で500円程度の支払いとするなどにより、所定の賃金と割増賃金、総額約1,200万円が支払われていないことが判明。また、1カ月最長120時間程度の違法な時間外労働も行わせていた、とみられている。
 また、技能実習生の労働条件の確保を図るため、労働基準監督機関と出入国管理機関が、その監督などの結果を相互に通報している。 労働基準監督機関から出入国管理機関へ通報した件数は431件、出入国管理機関から労働基準監督機関へ通報された件数は114件。
 さらに、強制労働など技能実習生の人権侵害が疑われる事案については、出入国管理機関との合同監督・調査を行うこととしており、23件の実習実施機関に対して実施した。
 この結果、技能実習生の適正な労働条件と安全衛生が確保された。

■新たな制度で、実習生の保護強化へ

法令違反などが発生していることを背景に、現行制度の抜本的な見直しが行われて技能実習法が制定され、2017年11月1日から新たな技能実習制度が実施されることになった。その柱は制度の適正化・厳格化とともに、一層の実習生の保護強化となっている。
 新法のポイントは、技能実習計画を認定制とし、技能修得に係る認定基準や欠格事由、報告徴収、改善命令、認定取り消しなどを規定した。さらに、実習実施者を届出制、監理団体を許可制とし、許可の基準や欠格事由などを規定している。
 一方、技能実習生に対する人権侵害行為には、禁止規定と罰則規定を設けるとともに、実習生に対する相談、情報提供等の実習生保護に関する措置を講じている。
 そして、外国人技能実習機構を認可法人として新設し、計画の認定や届出の受理、団体の許可関係の事務を取り扱う。あわせて、実習実施者・監理団体の報告徴収や実地検査などを行う。
 その一方で、優良な実習実施者・監理団体に対しては、4〜5年目の技能実習ができる、第3号技能実習生の受け入れや受け入れ人数枠の緩和を認める。

国内の各産業で、労働力不足が深刻化する中、外国人技能実習生受け入れが、本来の主たる目的である人材育成から逸脱することへの批判もある。実習実施機関の組織・事業者へのコンプライアンス徹底・浸透が注目される。

【経営倫理士 八山 政治】


2017年8月26日配信

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