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トップページ > 経営倫理フォーラム > コンプライアンス春秋+ > 2017年8月20日配信記事

座談会『ビジネス倫理』講座を終えて
経営倫理士13人、東京交通短大へ出講


 日本経営倫理士協会(ACBEE)では、東京交通短期大学(松岡弘樹学長)で、『ビジネス倫理』を開講、このほど終了した。講座は4月15日スタート、全15回。同短大の協力、助言があり高い評価をうけた。初回と最終回は、同大学専任講師が担当、中身の全13回分を経営倫理士13人で担当・出講した。
 経営倫理士の主たる役割は、経営倫理の理論と実務を教育・指導していくこと。多くの場合、自社や業界などの教育・研修の場で実践されている。今回は、高等教育のステージで、経営倫理の諸テーマについて講義をした。
 本講座最終回は7月29日。大学講義活動に初参加の経営倫理士もおり、関係者から注目されていた。活動の振り返り、総括を兼ねて、今回出講した経営倫理士による特別座談会を開いた。

<座談会参加者=敬称略>

  • 第8講担当 持田製薬 小林哲理(総合司会)
  • 第9講担当 サントリーHD 泉澤道子
  • 第10講担当 コアバリューマネージメント 朱純美
  • 東京交通短期大学 専任講師 平野琢









*左から、小林、
   泉澤、朱氏


■社会人対象の経験はあるが、学生は初めて(泉澤)

Q;講義準備で工夫した点や大変だった点を教えてください。


(泉澤)対象が学生である点は一番注意を払いました。これまで社会人を対象にした講習の経験はありますが、学生に教える活動は初めてでした。学生と社会人では興味も学ぶ動機も違うので、彼・彼女らを想像しながら伝わりやすい構成と資料作りに努めました。

(朱)私も学生への講義が初経験であることに加えて、講義テーマが第三者委員会という(学生にとっては)堅いテーマであったので苦慮しました。特に、学生とのコミュニケーションをどのようにとるか? という点は講義前によく考えました。講義準備では、経営倫理士講座で教授いただいた若狭勝先生の定義を用いたり、基礎理論まで立ち返って調べたりして分かりやすい講座作りを目指しました。結局、講義準備には20時間ぐらいを費やしましたが、自分の勉強にもなりました。


(小林)自分の場合は、なるべくいろいろな角度から学生に学んでほしいという気持ちから、文字だけではなく写真や図も多く使用することを工夫しました。写真の中には使用許諾が必要なものも含まれており、個々に使用許諾を取るのは大変でした。

■とても緊張したが、楽しかった…(泉澤)

Q;講義を実際に終えてみていかがだったでしょうか? また、講義を実践する中で工夫したことがあれば教えてください。

(泉澤)やっているときはとても緊張しました。でも、終わってみれば楽しかったです。実際にやってみたからこそ、見える改善点もありました。講義終了後に、あの時はこうすれば良かった! と思うこともあります。工夫した点としては、学生に近い立場からコミュニケーションをとるために、あえて教壇を降りて教室を歩きながら講義を行いました。

(朱)講義の冒頭は緊張しました。でも、学生の熱心さが伝わってきて、それが何よりうれしかったです。講義中に工夫した点は、学生が常に受身ではつまらないので、学生自身に重要な部分に蛍光ペンでチェックを入れてもらうなど、手と頭が能動的になるように工夫しました。

(小林)やってみて良かったと思います。講義中に工夫した点は、学生が受身にならないように、常に問いかける形で講義を進めました。そのために、投影資料は最初から配布しませんでした。言葉を換えれば、単に聞いて情報を得る学びではなく、一緒に考えて新しい事を知る学びを目指しました。

■包括的に自己学習する、良いきっかけ…(小林)

Q;今回、講義の準備、実践を通じて得た経験を自身のキャリア形成の視点から見てどのように評価しますか?

(泉澤)いろいろな面で意味があったと思います。講義中は自らの学生時代を思い浮かべて話すように心がけ、教材も可能な限り用語や概念をかみ砕いて作りました。この過程は、自分自身の理解を深めることにもつながり大変に勉強になりました。できることならば、他の先生方の講義も拝聴したかったです。

(朱)私も、良い経験だったと思います。自分自身が知らないと学生に説明できないから、講義準備では深く深く考えることを繰り返しました。これは本当に頭のいい体操になりました。また、私も他の先生方の講義を見たかったです。

(小林)自分は、今回の講義準備を通じて業界全体のコンプライアンスを初めて深く調べました。自社のコンプライアンスの話をする経験は多いのですが、業界のコンプライアンスについては初経験でした。今回の経験は包括的に製薬業界のコンプライアンスを学習する良いきっかけとなりました。また、今回の一連の講義の資料査読をしていた立場から、他の先生の講義資料も多く拝読させてもらいました。これはとても勉強になりました。

■倫理的であることを意識しての講義(朱)

Q;経営倫理士の活動として、今回の講座をどう評価しますか?

(泉澤)やってみて良かったと思います。経営倫理士を取得してよかったことの一つに、あらゆる業務を“倫理的な視点”からも見つめることができるようになった点があります。誤解を恐れずに言うのであれば、“倫理的な視点を持つこと”、そして“倫理的な視点”を持つ人を増やすことは経営倫理士の使命であると思います。今回は、後者を行うという意味において意義深いと思います。

(朱)私も同感です。自らが経営倫理士であることを意識して、法的問題よりも、倫理的問題にフォーカスして講義内容を構成しました。また、学生が記載したリポートをみて、教育をすることの重みを改めて感じました。

(小林)私も、学生に教えることを通じて“倫理的な視点”を持つ人を増やすことに対する重要性の意識がより深くなったと思います。

■学生の質問の純粋さ、鋭さは新鮮(朱)

Q;今回の講座の経験を踏まえて、大学側への提案はありますか?

(泉澤)講義内ディスカッションを行った後に、受講生から“学生個々の意見の相違に驚いた”という感想を得ました。この感想は素晴らしく、学生が多様性に触れる良い機会とした講義が機能したのだと思います。ただ聞くだけではなく、他人の人の意見も聞いて、自分の意見も言う機会を意識的に作ってほしいと思います。

(朱)学生の質問の純粋さと鋭さは新鮮でした。社会に出ても今の感覚を忘れないようにしてほしいと思います。大学で原理原則論を学んでも、現実社会で理論通りにはいかないことも多々あります。誰が言ったのが正しいのかではなく、何が正しいのかを自分で見極める力を養ってほしいと思いますし、それを養える講座があれば素晴らしいと思います。

(小林)学生の質問が鋭い点には驚きました。特に複数の価値(例えば法令遵守と食糧問題)が相克した際の問題について踏み込んで問われた時は驚きました。大学ではぜひ倫理的な感度のよい学生を褒めてあげてほしい。経営倫理士から見てもよいと感じる感度を、会社に入っても持ち続けてほしい。それを促進する取り組みを大学としてやってもらえたらうれしいです。

■独特の教育効果…日本経営倫理士協会と連携(平野)

Q;講座を終えて運営に携わった大学の側から、今回の講座をどのように見ますか? まとめを兼ねてご発言を。

(平野)まずは、素晴らしい講座をしていただいたことに感謝しています。本当にありがとうございました。経営倫理士協会、並びに経営倫理士の先生方への感謝の念に堪えません。
 今回の講座は、まず大きな新規性がありました。それは、教材作成から講座運営に至るまで、幅広く経営倫理士協会、経営倫理士である社会人の方々、そして大学が協働したという点です。その意味において、本講座は単なる寄付講座とも複数の教員が兼任する講座とも異なり、教育効果も独特のものになったのではないかと考えます。
 実際に学生が毎回提出するリポートからは、他の講座では見られない感想や回答が多く見られました。特に、講義で学んだ内容を自身の就職活動や実際の悩みに引き付けてよく理解し、それを講師への積極的な質問や発展学習へとつなげる内容が多かったことは顕著で、特筆に値します。本講座では、社会人の先生方の実践を通じて蓄積された知と大学における研究理論や教育ノウハウが融合し、それが学生の脳内に“理論と現実への往復運動”をもたらしたのではないかと考えます。
 本年度が初めての取り組みではありましたが、新しい教育における外部組織との連携活動として大きな可能性を感じております。



◇注◇
関連記事=東京交通短大でのACBEE派遣講座・第1報は [ニュースダイナミクス] 2017年5月2日(火)更新=へ掲載してあります。
http://www.acbee-jp.org/knowledge/dynamics/20170502-1.shtml



2017年8月20日配信

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