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企業・組織の経営倫理を推進する人材を育成・支援するNPO法人

トップページ > 経営倫理情報 > あの日、あの時…経営倫理士講座 > 2012年11月2日配信記事

公取委へ説明の時にも、役立った経営倫理士の見識

全国農業会議所
相談員
経営倫理士(第10期)八山政治さん

 「57才にもなる者に、このような研修を受けさせる必要があるのか。」これが外部研修の決定権がある、会社の或る幹部の言葉でした。当時私は、全国農業協同組合連合会(JA全農)を29年間勤務して、従業員100人あまりの子会社に出向していました。貿易・倉庫業務を行う会社で新しく本社にCSR室を開設し、支店総務部長からそこへ転勤して間もない時でした。新規に着任した専務取締役がCSR室長を兼ね、メンバーは2人だけでしたがその補佐をやれとのことでした。しばらくの間は試行錯誤でCSR業務に取り組んでいましたが、経営倫理実践普及協議会(当時)の経営倫理士養成講座の開催を知り、自ら受講を申し出ました。その結果が冒頭の回答となったのです。

 しかし経営トップの先見性は優れていました。数十あるグループ子会社の中でも、複数の事業所でISO9001、ISO14001を認証取得するなど先進的な会社でしたが、全社的にCSR経営へ取り組むことを決定し社内整備を進めました。そしてトップの「勉強してきなさい。そして社内育成に努めてほしい。」この判断で、私は受講に至りました。

 養成講座は10ヶ月間でしたが、講座で学ぶ度に視野が広がり、心はわくわくしました。なぜならば一流講師による最前線の講義が聞けて、小職の倫理DNAは刺激され開花していくのが、はっきりと自覚できたからでした。大企業を中心とした受講生(36名)で、子会社や中小企業の者はごく少数でしたが、自分は老兵との自覚もあり、いつも教室へは一番乗りでした。したがって全講師の話を熱心に聞き入り、ノートにはびっしりとメモを取り、受講後は早い時期にパソコンなどで再整理しました。特にこの講座の創設提案者で、日本経営倫理学会会長の水谷雅一先生の静かにも蕩々とした講義には引きつけられ、一言も聞き漏らしてはならない緊張感がありました。先生の「すべての集団や組織は価値判断のもとに行動している。その価値判断ではジレンマ克服とバランス実現がキーワードとなる。バランスの実現こそ最も大切である。」は、私のバイブルとなっています。また辛島、貫井、小林、田中、梅津など諸先生の講義も、奥深い内容で熱心に耳を傾けました。

 この講座の受講とともに、本業も精一杯勤めました。100人程度の会社ですから、CSR室長の専務(後に社長)を補佐し、なんでもやる必要があり大忙しでした。具体的に、@全社の職場単位で実施する春と秋の「コンプライアンス研修」の企画・運営・管理、A膨大な「危機管理」チェック、B環境認証「グリーン経営」の取得・維持、C「内部監査」の実施と報告、D(わが社なりの)「CSR&環境レポート」の作成と発信など、全従業員を引っ張りそして全員が精力的に取り組んだ結果、すべて実現できました。

 またある時はある法律の知識不足で、会社が知らない中に違反していたと指摘を受け、社長の指名によりCSR室長の小職と総務部長とで公正取引委員会へ参上し、懸命に説明を行ったことがありました。この時も講座の系統だった経営倫理の考え方や見識が、役立ったことは言うまでもありません。その後は積極的な講習会参加などにより、一定成績者に認められる公取事務総長名の修了証も受けました。さらに第一回CSR検定合格など、関係する資格にも挑戦しました。このようなチャレンジのベースとなったのが、この経営倫理士養成講座への参加とその資格取得でした。

全国農業会議所の相談員として外国人技能実習の指導講演する八山政治さん

 ここからは、私の思いを少しつづります。

 CSRや経営倫理は誠実経営の基軸であるとともに、経営のアクセルとハンドルとブレーキの大事な役目があります。そして実践し実現努力することで、経営体の価値と信頼を高めることができます。そのノウハウを持った実践アドバイザーおよびプロモーターとして、経営倫理士には大きな意義と責任があります。しかし経営倫理士を企業内部の業務に限定すれば、勤務部署や在任期間中の行動範囲となり、広く社会や世の中の活動としては制約があります。本シリーズ第2回(山口謙吉氏寄稿)にもあるとおり、これからは経営倫理士の社会的な認知拡大が求められます。具体的には経営倫理士活動を大企業だけに止めるのでなく、中小企業や地方の法人など、あらゆる組織・経営体に広げていく必要があります。その実践普及のプロ集団として、日本経営倫理士協会に出身分野を専門とする人材バンクなどの構想があれば、心から賛同します。このプロ集団の一員として、63才の今もそしてこれからも、微力を尽くせれば幸いと思います。

 なお私は現在、全国農業会議所で外国人技能実習の相談員をしていますが、一方で「かわらばん」という同会議所発刊情報誌に、「農業経営体の価値と信頼を高める」(5号連載)と題して、実践経験をもとにCSRと経営倫理について解説しています。

2012年11月02日配信


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