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トレチャコフ美術館所蔵『ロマンティック・ロシア』展
 クラムスコイの《忘れえぬ女》8度目の来日

トレチャコフ美術館所蔵『ロマンティック・ロシア』展が、東急文化村30周年記念展として東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中。トレチャコフ美術館は、ロシア最大の国立美術館。1856年、モスクワの若い商人パーヴェル・トレチャコフ(1832〜1898)が同時代のロシア人画家たちの作品を初めて取得したことが起源。彼は、5度にわたって美術館を増築した。彼が死去したときには、3300点の所蔵だったが、現在は、研究なども盛んに行われており、所蔵作品は20万点に及ぶ。

「ロマンティック・ロシア」展の展示風景

今回は、19世紀後半から20世紀初頭の激動のロシアを代表する画家、クラムスコイ、レーピン、レヴィタン、シーシキンらの自然や、人物像を主題とする72点で構成されている。雪解けの大水の春を描いた作品から、色彩あふれる夏、鮮やかな美しさに満ちた黄金の秋、白い雪の冬というロシアの大地のロマンティックな風貌が紡ぎ出された風景画などのほか、人々の日常生活や祝祭を描いたフォークロア的でロシアの誇りについても感じさせる作品が見られる。自然の息吹や人間愛の描写からは、繊細さも、厳しい自然と対峙(たいじ)してきた歴史的営みの中での国の風貌、民族のメンタリティの印象となって伝わってくる。

展示は、第1章「ロマンティックな風景」に始まり、特に第3章「子供の世界」などは変化を与え、楽しめるしっかりとした章立ての展示構成になっている。

同展の代表作品となったクラムスコイの《忘れえぬ女(ひと)》と注目の《月明かりの夜》は、人間的内面世界の豊かさまで表現し、実に魅惑的な絵画で人気が高い。

ここでは、作品発表当時から様々な憶測を呼んだ、「ロシアのモナリザ」とも称され今回8度目の来日となった、1883年頃制作の《忘れえぬ女》について取り上げたい。

《忘れえぬ女》は、原語のロシア語から直訳すると“Unknown lady”で、日本語では「見知らぬ女」にあたる。しかし、1976年に初公開された時に《忘れえぬ女》と訳され、作品中の全体の雰囲気であるロマンティックな情景がより強められ、見る者に与える印象もまたひときわ高められ、話題となった。

1883年、公開された時から様々な推測と説が生まれ、この威厳のある美人は、皇帝の宮廷に近い人物、あるいはトルストイの小説の主人公アンナ・カレーニナ、フョードル・ドフトエフスキーの小説『白痴』の登場人物ナスターシャ・フィリッポヴナなどと言われてきた。いずれもこれらの文学上のヒロインは、行動や生き方が当時のブルジョア社会の規範に挑戦的な新しい人間像として描かれた。クラムスコイの主人公もまた、これらのヒロインたちとの共通点が見られるが、しかし、特定の文学作品をモデルとはしておらず、独自に生み出された存在と言えよう。

クラムスコイが問いたかったのは、「外面の美と内面の美、道徳的美の境界はどこにあるのか?」ということだったという。当時、こうしたテーマは、ロシア文学、哲学、社会思想の大きな論点で、彼は、「人間の心の美」を支持した。同展キュレーター、ガリーナ・チュラクによれば、厳格で清教徒的ですらあるとされるクラムスコイが唯一、感覚的な美の魔力に身を委ねた作品とされる。

(陶)

○会 期: 2019年1月27日(日)まで開催
 ○開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
      ※毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
 ○観覧料:1,500円(学生割引あり)
 ○アクセス:JR渋谷駅(ハチ公口)より徒歩7分
 ○問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

2019年01月17日 配信

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