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トップページ > 経営倫理フォーラム > アーツ・ワールド > 2018年12月28日配信記事

上野の森美術館初導入の日時指定入場制で待ち時間短縮
 現存35点中9点来日の「フェルメール展」

“光の魔術師”とも言われ、《真珠の耳飾りの少女》の作品などオランダ絵画史上で17世紀の黄金時代を彩った早世の巨匠・ヨハネス・フェルメール(1632〜1675)。その数少ない作品を欧米の主要美術館から集めた「フェルメール展」が東京・上野の森美術館で開催されている。現存作品35点とされるうちの9点が来日し、特別にしつらえられ、「奇跡の」と評判のフェルメール・ルーム一堂に展示されている(展示替えの都合で最高8点)。その作品展は国内外とも毎回記録的な人気を誇る。今回の日本初公開作品は、《ワイングラス》、《取り持ち女》、《赤い帽子の娘》の3点。

「フェルメール・ルーム」の展示風景。作品は「牛乳を注ぐ女」(1658〜1660頃)  =東京・上野の森美術館

フェルメールは、寡作で絶大な人気を誇る巨匠。1632年にオランダの小都市、デルフトに生まれた。21歳から画家組合に登録、活動を始めた。名家の令嬢と結婚し、義理の母は当時のデルフト富裕層上位5%に入るほどの資産家だった。当時の他の画家と同じく本業は別にあり、彼の場合は宿屋業と画商だったので、制作は年平均2作という、ゆったりとしたペースだったと推測される。完璧さを追求し、作品を長いこと手元において修正することも多かったが、43歳という若さで世を去り、現存作はわずか35点前後とされている。今回は、最初期から晩年までそのうち9点が一堂に会する貴重な機会。

当時のネーデルラント(オランダ)は新興国で、プロテスタントの国であったので、王侯貴族や教会からの注文はあまりなかった。画壇も写実主義と古典主義の2大潮流の狭間(はざま)で揺れていた。市民という新たな受容層と美術市場に向けた制作が目立ち始め、他国に例のない歴史的分岐点にあった。

フェルメールも当時の時代背景のもと、当初は宗教画にも取り組んだが、主に風俗画に力を入れていった。オランダは、海抜が海面よりも低い湿地帯の国で、運河が張り巡らされ、太陽と地面を覆う蒸気との相乗効果で一日中、光が独特の変化を見せる。彼の作品もそのような光のイリュージョン(幻影)の中で生み出されたとされる。独特の太陽光線のオランダにあっては、陽当たりの強いところより、柔らかな光線の部屋の方が絵画制作に適しているとされ、フェルメールは、北と東の両方向からの採光が可能な、いつも同じ窓の下でカメラ・オブスキュラ*を用いて描いたと推測される。

代表作《牛乳を注ぐ女》(1658年)は、質素な身なりの女性を珍しく主人公にしている。鑑賞者の視線をさりげなく絵の中心要素に導いていく、当時主流であった透視図法の消失点の箇所に留めていたピンの穴がカンバス上に発見されている。同作は、フェルメール絵画共通の描法と視覚効果が極まっている。朝日の差し込む爽やかな日常のさりげなさを切り取り、その瞬間に永遠性を付与した作品。これらのふとした時間の流れとさりげなさ、その静かなドラマが、シュールレアリスムのスペインの画家ダリ(1904〜1989)でさえ画家のランク付けで第一位と評価した、フェルメールの圧倒的な人気の秘密と言われている。

作品展示はハブリエル・メツーの華麗な《手紙を書く男》など、オランダ絵画黄金期の約40点も併せて、宗教画から風景、静物画など6つの章建てで紹介されている。特に、第1章の肖像画群などは見事で圧巻だ。オランダ王家の別邸ハイス・テン・ボスに夫の功績を讃える部屋を構想したアマリア・ファン・ソルムス(1602〜1675)は、総督オラニエ公の18歳年下の妻だったが、その肖像は大型でドレスの色彩も愛を象徴するモチーフとして、歴史的にも興味深い。

(陶)

*カメラ・オブスキュラ:ピンホールカメラの原理により投影画像を得る装置で、素描などに使われた。
遠近感をもって目に映る像を平面に正確に写す技法で、15世紀のイタリアルネサンス期にレオナル ド・ダ・ビンチも写生に利用したとされる。

○会 期: 2019年2月3日(日)まで開催
 ○休館日:会期末まで開館。ただし休館日が追加となる場合がある
 ○開館時間:9:00〜20:30
      ※入場は閉館の30分前まで
 ○日時指定入場:待ち時間緩和を目的とし、事前に入場券を購入する方式。
         1日を6つの入場時間枠(各枠1時間半)に区切り、その間の入場者数
         を調整。枠内に入場すれば閉館まで鑑賞自由
 ○観覧料:日時指定入場制で来場者全員無料の音声ガイド付き
      2,500円(学生割引あり)、当日空きのある場合のみ+200円
 ○アクセス:JR「上野駅」公園口より徒歩3分
 ○問い合わせ・チケット予約:0570-008-035(インフォメーションダイヤル)

2018年12月28日 配信

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