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トップページ > 経営倫理フォーラム > アーツ・ワールド > 2018年05月18日配信記事

    東京国立近代美術館で「生誕150年 横山大観展」
   水墨画最高傑作40m超の《生々流転》も

東京・竹橋の東京国立近代美術館で「生誕150年 横山大観展」が開催中だ。その後、京都に巡回する。明治、大正、昭和の3つの時代をけん引した日本画壇の重鎮・大観の大規模な回顧展。数々の代表作をはじめ、習作など約100点が展示され、巨匠のスケール大きい制作の軌跡をたどることができる。

横山大観(1868〜1958)は水戸藩士の長男として生まれ、自身の制作活動だけでなく、文化・芸術活動にも幅広く貢献、第1回文化勲章を受章し、没後に正三位勲一等、旭日大綬賞も追贈されている。東京美術学校を卒業後には同校の助教授となっているが1898年、岡倉天心らと共に同校を離れ、日本美術院創設に参加。30代半ばでインド、アメリカ、ヨーロッパへ外遊、師の岡倉天心亡き後は日本美術院を再興し、近代日本画の創出を目指して若手画家をけん引した。

今回展示された作品の中では、富士を描いた名作《群青富士》で、改めて“富士画の大観”と呼ばれるゆえんを再認識させられる。数多くの富士を描いているが、大正から昭和へと変遷していく道程で描かれる富士は、その時代に応じてスケールが大きく、威厳あふれる作品に仕上げられていく。人物画の作品では《迷子(まよいご)》や《白衣(びゃくえ)観音》(個人蔵)などが出展されているが、《白衣観音》は、約100年ぶりに発見された作品として話題になった。
 日本情緒豊かな草木、海、川など自然景を画材とした作品も多数展示されているが、《夜桜》《紅葉》《或る日の太平洋》など、有名な作品は大観の特色と個性を十分味わうことができるもの。また、今回は《生々流転》が出展され、注目を集めている。全長40メートルを超える画巻で、日本一長尺の作品といわれる。山間の雲から生まれた水滴が、地上に落ちて水たまりとなり、それが川の流れをつくり、海へ注いでいく。そして最後は雲となり、再び天に昇って行くという「水の一生」が描かれている。「人間の一生」に通じる大観の人生観が盛り込まれた大作だ。この《生々流転》では、作者の大胆な水墨技法が結実している作品として評価が高い。

大観は、外国のこともよく知った上での東洋主義者だったといわれる。描法における大観らが開発した朦朧体(もうろうたい)の挑戦も、狩野派や円山派の「線」を知り抜いた上での“新しい古派”としての空気描写で、つまりは雰囲気描写だ。水墨の濃淡ではない、西欧的な空気描写の導入だったのだろう。それは、たらし込みによる没骨(もっこつ)技法だが、線を面や量に変えていったのだという。長谷川等伯や雪舟の骨格を維持しながら、西欧でも理解されるような二面性を持とうと、日本の精神性で表現したものを無線でやろうとした考え方だとされる。つまり実際には線はないけれども、ある、という「線」の表現。朦朧体の真髄もおそらくこれだろう。刀で例えると、早逝した同志・菱田春草は、研ぎ澄ましたカミソリであったのに対し、刀の刃をこぼして、ピシッとした線を引いたのが大観だと平山郁夫画伯(故人)は述べている。
 初期の《無我》《屈原》などの権力闘争の陰謀などと闘う大観から、芸術的に最高潮に達する《生々流転》、山を描いて己を語っている富士山の絵へと戦後の文化的価値が変わっても不動で、己の線を貫き通した。
 大観が一貫して追求した新しさは、主題、技法、そして朦朧体のような、大胆な色彩と構図の新鮮さだった。

《生々流転》は1923年9月1日、上野での再興院展10周年記念の発表初日に関東大震災と遭遇し、彫刻家の平櫛田中(ひらぐし・でんちゅう)がこの画巻を巻き戻して逃げたという。雑巾で描くなど、技術的にもさまざまなことを駆使し、水の流れに人生や時間など多彩なものを託して仕上げた、大観の水墨画の極致とされている。「絵というものは説明や解釈じゃない、“あっ”と感じてくれればそれでよい」という大観による語りかけの作品と平山氏は語っている。特に、「く」の字のような波型をたくさん描いて表現した海の様子は、大観ならではのもの。悟りの境地の脱力と熟練の姿勢による見事なバランス感覚を感じることができる。
 展示替えに注意して楽しんでいただきたい。

(陶)

○会 期:東京展は5月27日(日)まで開催
      京都展は6月8日から7月22日まで
  以下、東京展のみについて
 ○休館日:月曜日
 ○開 館:10:00〜17:30
      *金・土曜日は午後8時まで。入室は閉室の30分前まで
 ○入館料:1500円(学生割引あり、シルバー割引あり、中学生以下無料)
      入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」も観覧可能
 ○アクセス:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口 徒歩3分
      問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

2018年05月18日 配信

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