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クラーナハの名作《林檎の木の下の聖母子》も
  六本木ヒルズで大エルミタージュ美術館展

東京・六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで6月18日まで、7月から愛知県美術館、10月より兵庫県立美術館で「大エルミタージュ美術館展」が開催される。

「大エルミタージュ美術館展」展示風景=森アーツセンターギャラリー
※ 主催者の許可を得て撮影しています。

今展は、ルネサンスから始まり、17世紀から18世紀を中心とするバロック時代とロココ時代のオールドマスターの作品85点で構成。すべてヨーロッパ美術史上重要な地位を占める画家たちによる名品で、エルミタージュの常設展示作品から選ばれ多数出品されている。特に同展終盤に見られるルカス・クラーナハによる《林檎(りんご)の木の下の聖母子》は、同館が最後まで貸し出しを渋ったという名作。

ヨーロッパでは、一般的に画家はイタリアへ勉強に訪れるという伝統があるが、 ドイツ・ルネサンスの巨匠クラーナハは、その経験がなかったために、逆により一層、その独自性と芸術性が花開いたとされる。その粋を極めた作品として評価できるのが、今回の出品作。クラーナハの聖母子像の特徴的要素が盛り込まれ、特にこのマリア像は、当時のヴィッテンベルクで流行した理想の女性像と一致している点でも興味深い。

第4章のムリーリョとスルバランによる作品は、人々を教化するために分かりやすく効果を狙って描かれた宗教画だ。そのために、ひととき、俗物的とされ、後世に評価が下がってしまったことがあった。しかし、再び評価が高まりつつある。エピソード抜きに見ても、描かれた聖なる子どもたちは、皆、言葉に尽くせないほどの愛らしさと荘厳で満たされた神聖さをたたえ、作品の前では、無言のまま至高の愛に打ちのめされる。そんな名画としての風格が優っているのである。

ムリーリョは、子どもの作品で有名だが、スペイン絵画の横綱ベラスケスに続き、スルバランと並び、大関に当たる、と本展監修者の成城大学名誉教授・千足伸行氏は評している。スルバランは宗教画家として高名だが、子どもを描いたのはまれ。異色の作品である今作の制作は、ムリーリョの成功の影響があると推測される。幼いマリア像の愛らしさの中に宿る満たされた神性の表現は、スルバランならではの、得も言われぬ傑作だ。16世紀に「太陽の沈まぬ国」と呼ばれ世界の覇者として隆盛を極めたスペインに、その後、約1世紀遅れて訪れた、絵画の「黄金時代」。人々を敬虔(けいけん)なカトリック教徒へ導くために異端審問所による絵画の検閲、監督もあったという事実も踏まえておきたい。

注目される第3章の「フランドル:バロック的豊穣の時代」では、「農民画家」として知られる偉大なピーテル・ブリューゲル(1世)のファミリーによる絵画も2点出品されている。花の絵を得意とした「ビロードのブリューゲル」と呼ばれる息子ヤン1世のものと、その兄で、夜の火事を好んで描き、「地獄のブリューゲル」という呼称を持つピーテル・ブリューゲル(2世)(?)とされる作だ。《スケートをする人たちと鳥罠(わな)のある冬景色》では、厳しい寒さの中でも多くの村人がアイススケートやアイスホッケーをプレイし、平和で生き生きと生活を楽しむ様が良く伝わってくる。画中の黒いカラスと枯れ木の美しいシルエットも、たっぷりと描きこまれた背景の広がりと奥行きも、また詩情あふれるブリューゲル絵画の魅力の一つ。季節表現を高めたことでも知られるブリューゲル親子だが、楽しい絵画の中に忍ばされた鳥罠は、人生への寓意(ぐうい)とされる。

(陶)

○会 期:6月18日(日)まで開催中
 ○休館日:なし
 ○開 館:10:00〜20:00
 ○入館料:1,600円(学生割引あり)
 ○アクセス:東京メトロ日比谷線 六本木駅
       1C出口(コンコース直結)
 問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
 展覧会公式サイト:http://www.hermitage2017.jp/

2017年06月11日 配信

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