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太陽光の下、フリーダの愛と痛みを写真に昇華
      銀座・資生堂ギャラリーで「石内 都 展 Frida is」

メキシコを代表する画家、フリーダ・カーロの遺品を撮り下ろした「石内 都 展 Frida is」が銀座・資生堂ギャラリーで開かれ、31点の作品が展示されている。8月21日まで(月曜休み、入場無料)。

石内は、1970年代より独学で写真を始め、1979年、写真集『APARTMENT』と写真展『アパート』で第4回木村伊兵衛賞を受賞。2005年には『Mother’s 2000-2005未来の刻印』で第51回ヴェネチア・ビエンナーレの日本代表として世界から注目を集めてきた。現在も続けられているが、毎年寄贈される被爆遺品に“生命”を吹き込む優しいまなざしをもってカメラに収める『ひろしま』で、2007年に米国での展示も実現させた。

関連書籍として写真集『フリーダ 愛と痛み』(岩波書店)、『写真関係』(筑摩書房)が出版され、話題となっている。

メキシコに根差した独創的作品で、多くのシュルレアリストやピカソからも絶賛された女性画家、フリーダ・カーロ(1907〜54年)。今回は、時代の先端を苦悩しながら生きた天才的画家として、そして国民的大壁画家ディエゴ・リベラの妻としての波瀾に満ちたヒロインという、従来の評価の枠にはめない形の作品となっている。6歳で発症した小児まひと思春期の大事故による脊椎損傷の痛みと闘いつつ、夫の浮気に苦しんだ一人の女性の愛情あふれる日常を魅力的に撮り下ろした。

この展示にあたり、石内は「同ギャラリー初」を試みたという。それは、ギャラリー内の白い高い壁に色を着けることだったと話した。フリーダの生家で現在博物館になっている《青い家》と同じメキシカン・ブルー、米国ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館での個展と同じ淡い紫の壁が印象的だ。

作品は、ターコイズ・ブルーのモルヒネ、ハンドペインティングの施されたカラフルな日記帳、ひび割れた手鏡など、フリーダの苦悩を死に近いものとしながらも見事に昇華し、見る者は引き込まれる。

コンセプトは、真夏の銀座の街中にメキシコの青い海、青い空をイメージしたギャラリーへと、天上からフリーダが舞い降りる、というもの。そこで、入場者は出来ればエレベーターからではなく、1階奥の階段から降りてきてほしいということだ。「女性の表現者として、フリーダは時代を超えても何も変わっていないことを痛感した。表現者として、慈しみにあふれるフリーダに、私が出会えたことは大きかった」と語った。

石内都著『写真関係』(筑摩書房)には、「人にまつわる時代の匂いをまとったセンチメンタルな昂揚感」という表現があるが、それが、遺品を撮り続けている石内の写真に通底しているキーワードだろう。「時のうつわ」「時を抱きしめている空気の気配」は、代表的シリーズ『Mother’s』『ひろしま』で人々を魅せてきた石内独自の感性と言える。

石内が写す際に狙っているのは、「メッセージの意志が写真に漂う」ということ。同時に、「戦争の物語が私の目の前にある」という意識、つまり横須賀という戦争の可能性の危機感にさらされながら、多感な時期をそこで過ごした故にこそ抱き続けてきた問題意識が背景にある。

(陶)

資生堂ギャラリー「石内 都 展 Frida is」で石内都氏

2016年08月11日 配信

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