東京・丸の内の三菱一号館美術館で「ボストン美術館 ミレー展」が開催されている。
中でも、ボストン美術館の3大ミレーといわれる「種をまく人」「刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)」「羊飼いの娘」が同時に初めて日本で展示されたことは、話題になりそうだ。
他にも、ジャン=バティスト・カミーユ・コロー、テオドール・ルソーらのバルビゾン派や、「別離の前日」などの難しいテーマを扱ったヨーゼフ・イスラエルスなど。いずれもボストン美術館所蔵作品の中からえりすぐりの64点を出展している。
今回は、ミレーの生誕200年記念展示。ボストン美術館は、ミレーの最も包括的なコレクションを有することで知られている。「種をまく人」は、数点存在し、サロン出品作には諸説あるが、その中でも、サロン出品作として注目されている作品が今回、出展されている。
ミレーと農民という主題は、道徳性とキリスト教の理想の具現化という視点から評価されている。その画風は、より明るいものへと引き継がれていった。農民が汗を流すフランスのバルビゾンやフォンテーヌブローの風景など、農村生活の穏やかな情感を見る者に伝えてくれる。
ミレーは、最初の妻を早くに亡くし、二度目の妻とは、入籍が認められずにいた期間が長かった。その境遇を反映しているのが、「刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)」だ。農夫ボアズは、貧しいルツに心を留め、結婚という形で自分の社会階層に受け入れようとしている。ラテン語を嗜み、古典文学や聖書の知識があったミレーが、自身の境遇に照らし合わせて大切な農作業の仲間に寡婦で道徳的なルツを紹介するという着想で描いたといわれる代表作。
ミレーは、光源と光の効果を伴う実験に関心が高かったという。この制作意欲は、2点の「編物のお稽古」や「ランプの灯りで縫物をする女(団欒)」「眠る子の傍らで縫物をする女」などに顕著に見られ、比較鑑賞を楽しめる展示となっている。縫い物をテーマとした作品では、通常ひとりでする作業を仲間と共に行う様が描かれ、共同体の仕事という視点から制作しているのも興味深い。
また、死の前年に描かれていた未完の作品「縫い物のお稽古」も出品されている。
会期:2015年1月12日まで。休館日:月曜日(但し、祝日・振休の場合は開館。1月5日は18:00まで開館。)年末年始休館:12月29日から2015年1月1日まで。
入館料:一般1,600円(学生割引有り)
2014年12月23日 配信