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<第20回>
 再び人からコンクリートへ

 安倍晋三内閣が動き出した。民主党政権との大きな違いは企業の要望を聞き入れながら政権を運営している点。ともすれば反企業色が濃かった民主党とは対照的に、安倍氏が率いる自民党は、企業の成長力の強化を、政策目標の前面に出している。企業の成長なくしては経済が成り立たない日本にとって、大きな方向は正しいと思うが、各論には注文がある。

 安倍内閣は1月11日、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を閣議決定した。事業の規模は国の負担分だけで10兆円を超え、このうちの半分は公共事業が占めている。民主党は「コンクリートから人へ」をキャッチフレーズに掲げ、公共事業を減らして子ども手当などを支給したが、財源の調達ができずに途中で断念。「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズもそのうちほとんど耳にしなくなった。

 民主党政権の失敗を間近で見ていたためだろうか。安倍内閣は逆に「人からコンクリートへ」の道を歩み出しているように見える。公共事業の恩恵を受ける一部の企業にとっては受注と売上増につながるが、公共事業は経済を一時的に活気づかせることはできても、波及効果は小さいことが過去の経験から実証ずみである。その結果、国の借金(国債)が積み上がり、日本国債の信用力が低下するのは確実だ。民主党に対して国民が不信感を強めたのは、財源の手当ができなかったからであり、「コンクリートから人へ」という発想そのものを全否定はできないだろう。財源の調達に四苦八苦していた民主党の姿を覚えている国民は、安易な国債発行に頼る安倍内閣の姿勢をどう評価するのだろうか。

 本当に必要なのは、一部の企業に「つかみ金」を渡すことではなく、企業が活動しやすい環境を整えることだ。最大のテーマは環太平洋経済連携協定(TPP)への参加問題だ。安倍内閣はどう対応するのか、いまだに明確な方向を打ち出してはいない。現時点では、一部企業への「大盤振る舞い」を経済界も総じて評価しているが、TPP問題の扱いによっては失望を生む可能性がある。

(希望の民)

2013年01月13日配信


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