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<第17回>
 経歴詐称を看過する慶応大への疑問

 慶應義塾大学の「特任」准教授で、著書「媚びない人生」が売り上げランキングの上位に入っているジョン・キム氏の経歴詐称疑惑が浮上している。この著書で紹介されている経歴に誤りがあると、外部からの指摘を受けて本人がブログで訂正したことから、騒ぎが広がり始めた。まず問われるべきは本人の責任だが、慶応大学の対応もお粗末だ。「翻訳ミスのたぐい」と罪を認めようとしないのでは、組織全体の信用力に疑問符をつけざるを得ない。

 ジョン・キム氏が著書で公開している経歴を、他で公開されているものと比べて改めて検証してみよう。まず、目を引くのは生年月日が記されていないこと。以下、順を追って見ると、慶應義塾大学大学院准教授(→特任准教授)、米インディアナ大学博士課程修了(→単位取得退学?)、英オックスフォード大学上席研究員(→客員上席研究員?)、欧州連合研究員(?)、ハーバード大学法科大学院客員教授(→訪問研究員)と疑惑だらけなのだ。本人は慶応大学とハーバード大学の2か所だけをブログで訂正したが、著書を出版する前に自分の経歴をチェックしないはずはない。出版の時点で「詐称」を自覚していたとみるのが当然だろう。

 経歴詐称は犯罪である。しかも、社会への影響力が大きい大学で教鞭をとる人間には決して許されない行為であろう。「一般企業なら解雇に相当する事案」(大手企業の人事部門担当者)との声もあるが、慶応大学の反応は鈍かった。「キム氏の経歴詐称問題をたどっていくと、彼を後押しして採用した人間の責任が問われるからだ」といった説が流れているが、そんな内輪の論理は通用しないはずだ。

 「媚びない人生」でキム氏は組織に縛られず、自分の内面を磨いて強く生きることを若者らに説く。内容の薄さはこの際、問わないが、偽りの経歴で世の中を渡り歩いてきた人間に人生訓を説く資格はない。そして、経歴詐称の事実を知りながら、野放しにしている大学と出版社には「言論界の倫理はどこに行ってしまったのか」とぜひ聞いてみたい。

(希望の民)

2012年07月09日配信


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