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<第11回>
 約束を守らないリーダーの末路

 「震災対応に一定のめどがついた段階で若い世代のみなさんに色々な責任を引き継いでいただきたい」。6月2日、内閣不信任案を突きつけられた菅直人首相はこう語り、「6月中には辞任する」と受け取った鳩山由紀夫前首相の働きかけで不信任決議を免れた。ところが、鳩山氏の意に反して菅首相はその後、辞任時期の引き延ばしに精力を注ぎ、「居座りだ」と様々な方面から批判を浴びている。冒頭の首相発言を聞いた多くの人は、辞任表明だと受け止めた。「約束を守らない人間だ」という評価が定着してしまった菅首相はリーダーとしての資格を失ったと言える。

 延命に走る菅首相を「ペテン師だ」と批判した鳩山氏も同様だ。普天間問題をはじめ首相在任中の不手際も目立ったが、極め付きは「首相を辞めたら国会議員を辞める」という公約を反故にしたことだ。2代続けて約束を守らない人間を首相にした民主党の信用が地に落ちるのは当然である。

 約束にもいろいろある。どんな約束であれ、きちんと守られるのが理想だが、中には努力してもやむを得ず果たせない約束もあろう。政治に関して言えばマニフェスト(政権公約)は政党が選挙民に示した約束だが、多種多様な項目をすべて実現するのはおそらく不可能だ。マニフェスト実現のために全力を注いだにもかかわらず実現できない項目はあるだろうが、国民に率直にその理由を説明すれば、「約束を破った」と批判する人はそれほどいないのではないか。

 企業が公表している経営計画にもマニフェストと似た側面がある。経営計画は、企業と、投資家や消費者などのステークホルダー(利害関係者)との約束だが、すべての内容を実現できるわけではなかろう。例えば、オムロンは7月に売上高1兆円、営業利益率15%以上を目標とする10年間の長期経営計画を発表した。新興国や中国市場で主力のFA(ファクトリーオートメーション)機器などを大きく伸ばす計画だ。10年間のうちには現時点では見通しづらい環境変化が起きるかもしれないが、大切なのは計画を本気で実現する意思があるかどうかだ。計画の方向に沿い、経営者が計画期間中にどんな手を打ち、成果を上げたのか。関係者が納得する説明ができれば、約束を完全には守れなかったとしてもリーダーは信任を得られるはずだ。

 対照的に、自らの出処進退に関する約束は「守るべき約束」の筆頭であろう。鳩山氏と菅首相が辞めるか辞めないかは本人次第である。「辞める」と公言しておいて「辞めない」から「約束を守る意思がない」とみなされ、信用を失っているのだ。「守れる」約束を「守らない」リーダーは直ちに退場させられるべきである。

(希望の民)

2011年08月03日配信


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