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<第10回>
 「脱原発の旗手」にひと言

 「一人の人間として多くの人々に幸せになってもらいたい」。東京電力・福島第1原発の事故後、ソフトバンクの孫正義社長は「脱原発」と太陽光発電などの「自然エネルギー推進」を主張し、「脱原発の旗手」として脚光を浴びている。冒頭の発言は記者会見で脱原発について問われたときのものだ。孫社長の動きは速い。5月25日には神奈川、愛知など19府県が参加する「自然エネルギー協議会」設立を発表。翌26日には同協議会に、関西2府5県で構成する関西広域連合が全体として参加する約束を取り付けた。

 いっこうに出口が見えない原発事故の処理。放射能の恐怖におびえる生活を余儀なくされている人々にとって、「脱原発」を熱く語る孫社長の姿は、たくましく映るのだろう。脱原発の進め方が「性急すぎる」といった批判もあるが、脱原発の考え方については多くの支持を集めているようだ。「脱原発」や「反原発」の運動は福島の事故以前からあり、決して孫社長の独創ではないが、日本を代表する経営者の一人が声を大きくして主張し始めた意味は大きい。

 だが、ちょっと待ってほしい。原発事故への東電の対応のまずさは厳しく批判されるべきだが、エネルギー効率が良い原発が生み出す電力を大量に消費し、依存してきた筆頭格は産業界であることを忘れてはならない。ソフトバンクが提供する携帯電話サービスは、基地局が大量に消費する電力なくしては成り立たない。「原発を使ってくれと頼んだわけではない」と孫社長は言うかもしれないが、営利企業である東電が、投資や運営コストの面で採算に合うと判断して原発を建設し、産業界に電力を供給してきたこと自体は非難できないだろう。ソフトバンクの携帯電話はつながりにくいとの根強い批判があるが、基地局への投資が足りないことが原因とみられている。これも投資コストとサービスを天秤にかけた結果の判断ではないだろうか。

 「脱原発」や「反原発」を唱えるのはよいが、その前にエネルギー多消費型のライフスタイルを前提とした産業構造を見直す必要はないのか、産業界は自問自答するときではないか。

(希望の民)

2011年06月10日配信


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