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<第5回>
 日本振興銀事件、「歴史は繰り返す」では済まない

 強力な人事権を背景に、重要事項は前会長を中心に側近で集まった「戦略会議」で決められ、取締役会など法律的な根拠のある会議は有名無実化していた。前会長はファミリー企業群を組織し、銀行に大口預金をすれば関連企業のホテルに宿泊招待する一方で、融資先には銀行の窓口で会員権の販売を勧めるなど銀行とファミリー企業群は密接に結びついていた。ファミリー企業に巨額の資金が流れ、銀行の損失が膨らんだ。この文章を読んで、日本振興銀行(東京)を連想する人は多いだろう。東京地検は金融庁検査を妨害したとして日本振興銀・前会長の木村剛容疑者ら4人と法人としての同行を銀行法違反罪で起訴した。木村前会長が法令違反を犯したのかどうか、現時点で決めつけることはできない。ただ、行き過ぎたワンマン経営が結果として銀行の屋台骨を揺るがしてしまったのは確かなようだ。

 さて、冒頭の文章は今から10年前の新聞記事からの抜粋である。1999年に経営破綻した第2地方銀行大手の東京相和銀行(現・東京スター銀行)の創業者で、今年死去した長田庄一元会長についての論評だ。バブル期の融資が焦げ付き、多額の不良債権を抱えた同行は、経営難を乗り切るべく97年と98年に第三者割当増資を実施したが、このうちの約189億円は取引先に迂回(うかい)融資した資金を還流させた「見せ金」増資だった。長田元会長はこの事件で有罪判決を受けた。日本振興銀行は融資先などで構成する任意団体「中小企業振興ネットワーク」を創設。会員企業に融資した資金の一部が同行の増資資金に回った可能性も報道されている。報道が事実なら、東京相和銀行がファミリー企業を使って「見せ金」増資をした手法と酷似している。東京相和銀だけではない。過去に経営破綻した金融機関の多くが同様なワナに陥っており、日本振興銀も同じ道をたどったにすぎないのかもしれない。

 木村前会長は「金融維新」をキャッチフレーズとして掲げ、旧態依然たる銀行界に風穴を開けると期待されていた人物だ。「歴史は繰り返す」と突き放すのではなく、なぜ、銀行トップは同じ過ちを犯すのか、銀行界が抱える構造問題にも改めて目を向けたい。

(希望の民)

2010年08月07日配信


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