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<第4回>
 同族経営から脱皮できない企業の限界

 引っ越し大手、アートコーポレーションの創業会長が辞任した。わいせつ行為による東京都青少年健全育成条例違反の容疑で書類送検された責任をとったという。同社は05年に東証一部に上場し、「アート引越センター」のサービス名でテレビCMにも登場する知名度が高い企業。引っ越し業は消費者に直結するビジネスだけに、企業イメージが悪くなれば本業にも悪影響を及ぼす可能性が高い。上場企業の経営者として、というより一人の人間としてあるまじき行為なのはもちろんだが、同社の経営の実態を見ると、同族経営が抱える構造問題が浮かび上がる。

 同社の「顔」となってきたのは、会長の妻である寺田千代乃社長である。マスコミのインタビューなどに応じるのは常に千代乃社長。財界活動などの公職すべてを社長がこなしており、会長が表に出てくる機会は皆無だった。会長と社長との役割分担は個々の会社によって異なるが、同社の場合は夫である会長の役割が外部からは全くうかがいしれず、謎めいた存在だった。「女性の感覚」を生かした経営で業績を伸ばしてきた千代乃社長はときおり、「夫の支えがあってこそ今がある」といった話をすることがあり、「千代乃社長が前面に出ているが、実際のかじ取りをしているのは会長ではないか」との見方が生まれる一方で、「経営は社長に任せきりで、会長はほとんど何もしていない」との風評も絶えなかった。

 会長と社長の関係が実際にはどうなっていたのか、真相は不明だが、同社は典型的な同族企業である。同社の役員には、夫妻の2人の息子も名を連ねている。「同族だからだめ」と決め付けるわけにはいかないが、今回のような騒動が起きると、役員としての適格性を正当に判断して選んでいるのか、と勘繰りたくもなる。同族経営には利点もある。うまく機能すれば、経営の意思決定が素早くできるし、信頼できる「身うち」の人間だけで固めた方が安心という側面もあるだろう。創業当初は外部から人材を集めるのが難しく、結果として同族経営にならざるを得なかった企業も多いに違いない。しかし、同社はあえて株式を公開し、上場企業の道を選んだはずだ。その時点で、同族で固めた経営のままで社会の公器としての責任を果たせるのか、自問自答する必要があったのではないか。

 政治の世界に目を転じると、2世議員、3世議員への批判が強まっているが、「職業の自由」を奪うわけにはいかず、「世襲」に規制をかけるのは難しい。同様な理由で、上場企業といえども同族経営を禁じるのは無理だろう。だが、企業経営や政治の「世襲」に対する国民の視線は一段と厳しくなっており、安易な「世襲」は許されないことを肝に銘じるべきだ。

(希望の民)

2010年06月11日配信


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