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<第3回>
 トップの言葉の重さとは

 「私は創業者の孫。すべてのトヨタ車に私の名前が入っている。車が傷つくことは私自身の身体が傷つくことに等しい」。リコール問題に揺れるトヨタ自動車の豊田章男社長は2月下旬、米議会の公聴会でこう証言した。リコール問題が表面化した後、トヨタの対応は後手に回り、傷口を広げた。社長がリコール問題について、公の場で説明するのが遅かったとの指摘もある。米議会でのこの証言には「誠意を感じた」と評価する声が日本国内では多いが、米国側の反応は総じて厳しい。

 社長がリコール問題に真剣に取り組む姿勢を打ち出すのは当然だが、米国のユーザーが求めるのは実効性のある対策である。公聴会で豊田社長は「私は就任以来、『もっといい車をつくろうよ』ということをまず(第一に)やっている」とも力説したが、トヨタ車の安全性を立証するには不十分な証言だった。

 組織のトップが発する言葉は、その組織の命運を左右する。そうわかっていながら、不用意な発言や上滑りな発言とみられるケースが多い。その典型が、国のトップである鳩山由紀夫首相の言葉だ。「プリーズ・トラスト・ミー」。米軍の普天間飛行場の移設問題で、鳩山首相は米国のオバマ大統領にこう語り、自ら混乱の種をまいた。その後も政治資金問題や郵政改革などで首相の発言はぶれ続けている。普天間問題では最近、「命がけで体当たりで行動していく」と語ったが、どこまで信じてよい言葉なのだろうか。国民の見る目は一段と冷たくなっている。

 トップの言葉には「裏付け」が欠かせない。豊田社長がいくら「いい車」と強調しても、それだけではユーザーの信頼は回復しない。「気配り」上手な鳩山首相がどんなに耳あたりのよい言葉を並べ立てても、その場しのぎの言葉にすぎないとわかれば国民は本気で耳を傾けようとはしないのである。CSR(企業の社会的責任)や経営倫理の大切さを訴える企業経営者は多い。それ自体は歓迎すべきことではあるが、本当に裏付けのある言葉なのかどうか。ステークホルダー(利害関係者)は企業の動向をじっと見つめている。

(希望の民)

2010年04月06日配信


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